3月13日 シェアハウスの闇(下)

朝日新聞2018年3月3日8面:預金額水増し見逃した「異色の地銀」 「通帳には3千万円の残高がありますよ。あなたが出したんでしょ。ウチには委任状もある。これで稟議を通したんですから」。今年初め、地方銀行スルガ銀行(静岡県沼津市)の都内の支店。借金返済が厳しくなった30代の男性会社員が返済猶予を求めると、男性行員からそう問い詰められたという。男性はスルガ銀行からの全額融資で1億数千万円のシェアハウスを買った。融資資料は不動産仲介業者に渡し、手続きを任せた。行員とは融資契約の日に初めて会ったが、その場で通帳の中身は確認していない。
「委任状は書いたかもしれないが、預金残高は数十万円しかなかった」。男性がそう伝えると、行員は態度を変えて「すっかりだまされた。私たちも被害者だ」と語ったという。男性には心当たりがあった。融資前、仲介業者から「預金を多くしたいのでネット銀行で口座をつくって」と頼まれた。「不正はダメだ」と断り、大手銀の通帳を預けたが、その写しが改ざんされていた。
シェアハウス投資で多くを融資したスルガ銀行の支店には、賃料不払いに遭ったオーナーが返済猶予を求めて押しかけている。似たようなやりとりが複数の支店で繰り返され、不正も次々に発覚しているー。同行は1895年設立。全国133店(昨年4月時点)を構え、大手銀並みの高給で知られる。2016年まで31年間トップえお務めた創業家出身の岡野光喜氏が、個人向けローンに注力して収益を向上させた。
地銀の多くが人口減で貸し出し減に苦しむ中、「異色の地銀」として注目された。金融庁の森信親長官は昨年5月の講演で、全国の地銀の収益率を並べたグラフで一つだけ跳び抜けた銀行を指し、「これはスルガ銀行。他行が課さないところにデータ分析をして貸すという特質なビジネスモデル。継続して高い収益率だ」と高く評価した。しかし、融資を拡大して高収益を実現した裏で、審査が甘くなっていた可能性がある。
通帳コピーを改ざんした預金残高の水増し、源泉徴収票や給与明細のコピーを改ざんした年収の水増しーいずれもスルガ銀行の融資基準に合わせて貯蓄や収入などを偽り、多額の融資を引き出そうとしたとみられる。誰が不正を行ったかはまだ明らかではない。ただ多くの銀行では、預金残高や年収を示す書類は行員が自ら原本を確認するのが原則で、同様の不正は通らないはずだという。スルガ銀では原本がちきんと確認されなかった可能性がある。
複数の不動産業者は、業界では「スルガスキーム」という言葉が知られていると明かす。他行より金利が高めだが、審査が速く金額も大きい。他行で通らない案件が持ち込まれることも多いという。シェアハウス投資では、融資審査以上の問題も持穣している。多くのオーナーは不動産向け融資と同時に、高金利で使途自由のフリーローンも借りていた。不必要でも仲介業者や行員から「融資の条件」などと迫られた、と多くのオーナーが証言している。
スルガ銀行は当初、朝日新聞の取材に「行員の不正関与は確認できない」「フリーローンの要請は把握していない」などと説明していた。しかし不正が続々と報じられたため、自主調査に乗り出した。融資の実態がどこまで判明するか。スルガ銀の説明に注目が集まる。(藤田知也、久保智)

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