3月11日てんでんこ 新聞舗の春「8」

朝日新聞2018年3月2日3面:「浪江町を無くしてはいけない」。解除方針を受け入れた。 福島県浪江町の新聞販売所「鈴木新聞舗」は2017年1月17日、創業以来80年以上の歴史を刻んできた町の中心部で、原発事故後約6年ぶりに業務を再開した。所長の鈴木裕次郎(34)は震災復興に関する県の補助金約430万円を受け取り、東京電力の賠償金約2千万円と合わせて、再開資金に充てた。約1200万円で店舗を修復し、約650万円で新たにチラシを折り込む機械を購入した。
業務再開の翌日、政府は浪江町議会に対し、帰還困難区域を除く町内の避難指示を3月31日に解除する方針を提示した。この解除の日程をめぐって、町議会では意見が割れた。「解除が遅れれば、町が消滅してしまう」と賛成する意見がある一方で、「自宅がある地区はまだ線量が高い。『線量計をつけて帰るなんてモルモットのようだ』と町民は言っている」という反対意見が噴き出した。
裕次郎は一日でも早く避難指示が解除されるよう祈った。時間がたてばたつほど、子どもたちが避難先の学校に通い始めるなどして生活が定着し、戻りにくくなってしまう。裕次郎が新聞舗再開の判断材料にしたのは、16年9月に町などが町民約9千世帯に実施した意向調査(回答率53.6%)だ。「戻らない」と答えた人が最多の52.6%だった。ただ、「すぐに・いずれ戻りたい」も17.5%「まだ判断がつかない」の28.2%と合わせれば、4割以上が町に帰ってくる可能性を残していた。激しい議論の結果、町長の馬場有(69)は2月27日、町議会で「町民の誰もが思うのは『浪江を無くしてはいけない』という思いだ」と声を詰まらせながら、政府の解除方針の受け入れを表明した。
裕次郎は安堵した。町の関係者からは「1千人ぐらいは帰ってくるでしょう」との感触を得ていた。住民が1千人帰ってくれば、競合店と分け合っても300部ぐらいは購買してもらえる。経営は厳しいが、帰還者の増加に伴い、徐々に軌道に乗せられるだろう。しかし、そんな期待は、あっけなく裏切られてしまう。避難指示解除後の4月、町に帰還したのは193人、140世帯だけだった。(三浦英之)

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