3月11日 シェアハウスの闇(中)

朝日新聞2018年3月2日9面:タレントCM・本出版 巧妙な夢物語 「シンデレラは夢をかねるために馬車に乗った」タレントのベッキーさんが語るテレビCMが流れたのは、昨春ごろのことだ。売り込んでいたのは、不動産業者スマートデイズ(東京)が首都圏で展開する女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」。真新しい木造2階建てに、トイレや風呂が共用の1部屋7平方㍍程度の部屋で、初期費用が安く、家具の準備も不要。身一つで上京したい若い女性がターゲットだった。
スマートデイズは「かぼちゃの馬車」を中心に約900棟を管理し、建築中や更地に建つ予定の物件が他に100棟ほどある。投資目的でオーナーとなったのは約700人。そのほとんどが銀行で多額の融資を受けて、割高な物件を買っている。長期の賃料収入を保証され、返せると踏んだたねだが、昨年10月から賃料は突然、一方的に減額され、今年1月からはゼロにされている。
「『家賃0円・空部屋』でも儲かる不動産投資」。今年初めまでスマートデイズ社長だった大地則幸氏は、2016年夏に大手出版社からそんなタイトルの単行本を出版している。ページをめくると、「東京は人口が増えている」「転入者は20代の女性で非正規社員が多い」「彼女たちの悩みは新居の初期費用」といったデータが列挙され、都内の女性専用シェアハウスには需要があると強調している。さらに、賃料収入のほかに入居者に仕事を紹介することなどで収入も得られる。だから家賃ゼロでも高利回りの賃料が入るー。前社長の著書はそんなストーリーとともに「投資家は確実に利益が出る」「『うまい話』が実現可能となる」などとうたっていた。こうした売り文句は同社の投資セミナーでも繰り返され、「高利回りの秘密」として紹介された。「家賃保証」の安心感も手伝って、一流企業で働く会社員らが「うまい話」に次々に乗った。複数のオーナーは「もっともらしく聞こえて『なるほど』と思わされた」と口をそろえて悔しむ。
だが、実態は「うまい話」にはほど遠かった。前社長の著書では入居率が9割としていたが、同社によると、実際は昨年初めの時点で3割台しかなかった。家賃以外の収入も月数百万円程度だったといい、900棟分の家賃を補うにはまるで足りなかった。それでもスマートデイズは顧客を集めるため、70社以上の不動産仲介業者に資料を渡して宣伝させ、最終的に700人ものオーナーを獲得した。制約すると、仲介業者には物件価格の5~6%の報酬が払われていたという。ある仲介業者の社長は「よくできたビジネスモデルだと感心した。面白い商品だと思って客に勧めたが、今ではとんでもないことをしたと猛省している」と取材に語った。
スマートデイズをマネするように、賃料収入を保証してシェアハウスを売る業者は次々と現れた。だが、後発の業者も相前後して賃料を払わなくなっている。シェアハウスへの投資で賃料不払いとなったオーナーは全体で1千人規模にも膨らんでいる。ただ、多くの会社員らがシェアハウスに投資したのは、巧妙なセールストークだけが理由ではない。億単位のお金を次々に貸し出した地方銀行、スルガ銀行(静岡県沼津市)の存在も不可欠だ。(藤田知也)

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