3月10日 統一地方選を前に 人口減歯止めへ住民動く

朝日新聞2019年3月5日28面:高知・梼原町 会社つくりGS運営 60年間、人口が減り続けてきた町がある。地域から店舗が消え、学校は廃校になり、イノシシなどの被害で田畑も荒れてきた。「自分たちで出来ることは自分たちで」。やむにやまれずに住民が動き出すと、思わぬ効果も現れ始めた。高知、愛媛県境に位置する高知県梼原町。その最北部にある四万川区のガソリンスタンドに、次々と車が給油に訪れていた。「大株主やき。ずっとここで給油しちゅう」と軽トラックで訪れた農業の今城操さん(91)。妻の照子さん(86)は採れたばかりのジャガイモの袋に値札をつけ、ガソリンスタンド内にある市場に出荷。早速、別の女性たちが購入していった。ガソリンスタンドは、株式会社四万川が運営する。区の住民が出資して2013年に設立した会社だ。きっかけは、区で唯一のガソリンスタンドが廃業したことだった。町の人口は1958年の約1万1千人をピークに右肩下がり。豪雪被害があった63年には千人以上が転出するほど、現在は約3500人まで減った。四万川区にある店舗は食料品など5軒。ガソリンスタンドが消えると、雪が積もる冬に灯油を手に入れるのも難しくなった。
そこで高知県の「集落活動センター」という制度を利用し、新たにガソリンスタンドをつくった。米や野菜を売る市場も併設。こうした費用の大半は県や町から補助を受けた。社長を務める空岡則明区長(66)は「売れないと思っていた野菜が売れて住民も自信がついたうえ、交流の場として活気が出てきた」と話す。明治時代に六つの村が合併してできた町は、当時の村が区として残る。区長も選挙で選んでおり、こうした住民のまとまりが残っていたため、会社設立もスムーズに進んだという。隣の越知面地区では、廃校になった小学校を活用しようと区でNPO法人を設立した。校舎を改修し、昨年5月から合宿などに使う簡易宿泊所として運営を始めた。職員室では地域の女性たちがパン屋兼カフェを開いている。
瀬戸口登貴恵さん(67)は40代で町にUターンし、人が減って田畑が荒れているのに驚いたという。一緒にカフェを運営する女性たちも名刺を配って宿泊やカフェをPRして回っている。「地域を終わらせたらいかんとみんなが協力してくれる」と話す。このほか、イノシシや鹿などを解体処理するジビエカーを走らせるなど、六つの区がそれぞれ集落活動センターの仕組みを使って地域の課題に向き合う。矢野富夫前町長(64)によると、9年前に町職員が住民の聞き取り調査をしたのが出発だという。「97%の住民が『一生この町で過ごしたい』と答えたものの、雇用がないことや野生動物被害などに不安を抱いていた」そこで、こうした人口が減ったことにともなう問題に住民自ら取り組んでもらうことにした。「自分たちでできることは自分たちでと自立してもらうことが、地域を維持することにつながっている」
 地域の再生 移住者から評価 住民自ら人口減に立ち向かう試みは、思わぬ効果を生んでいる。町の支援策も功を奏して、町への移住者が増え、人口減に歯止めがかかってきたという。町の移住コーディネーターの片岡幸作さん(67)によると、この5年間で子育て世代を中心に80世帯179人が移住した。「自然の豊かさや空き家を改修して安く賃貸に出していることなどに加え、住民が自立していることも評価されている」「持続可能な地域社会総合研究所」(島根県益田市)の藤山浩所長は「梼原町は住民自ら地域の課題を解決していくことで、地域社会を再生することに成功している。その結果、移住者から選ばれている」と指摘する。
藤山さんが10年と15年の国勢調査をもとに人口の変化を調べると、離島や山村で若い女性が増え始めていることがわかったという。梼原町もその一つだ。「人生100年時代になり、いかに稼げるかではなく、いかに幸せに暮らせるかで住む場所が選ばれるようになった。地域社会の再生も、その条件の一つだ」(山下剛)

 

 

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