3月10日 白球の世紀 37

朝日新聞2018年3月1日14面:優勝5日後 前首相が落命 1931年8月13日から始まった第17回全国中等学校優勝野球大会は、初出場の中京商(愛知、現中京大中京)が、21日の決勝戦でやはり初出場だった台湾代表の嘉義農林を4-0で破って優勝した。この年から、中京商は3連覇を果たす。100年を超える大会の歴史で3連覇を成し遂げたのは、同校のみ。そしてその3年間は、日本の国内が戦時体制へと変容を遂げた時期だった。
その最初期。地方大会の事前連載を始めた同年7月14日付大阪朝日新聞は、「ペンキ職工上がりの/鳶色の家の親分/風雲急とあって首都伯林(ベルリン)へ」とドイツ政局を1面に載せ、政権を目指す、ミュンヘン在住の「『ドイツ製ムソリーニ』国粋社会党党領」、アドルフ・ヒトラーの動向を伝えた。「今こそ純ドイツ人になりきってゐるが、素性を洗えばオーストリア生れ」「大規模なる大衆暗示の技術の政策的実践者」としている。
中国東北地方では7月前半、「万宝山事件」が起きた。長春郊外の万宝山で朝鮮人農民と地元の中国人が衝突。中国各地で反日運動が強まり、日本の植民地にされていた朝鮮人の人々までが敵視された。
大会人気はますます高まり、アルプス席や外野席は早朝から満員。一方、7~8月の国内では、大阪「ひとのみち教団」(現PL教団)を警視庁と大阪府特高課が家宅捜索。新興宗教への弾圧が続いた。法廷では「第2次、第3次共産事件」と称し、非合法化された共産党員の裁判が進んでいた。
中京商が初優勝した5日後の8月26日、前首相の浜口雄幸が死亡した。その容姿から「ライオン宰相」と親しまれ、議会中心主義と穏健外交で知られた浜口は、首相在任中の前年11月14日、東京駅で右翼結社員の佐郷屋留雄に狙撃されて重傷を負い、療養中だった。大阪朝日新聞は号外を発行し、「世界の損失」「徳の人だった」などと関係者の嘆きを伝えた。そして、統制の波が野球に及ぼうとしていた。(編集員・永井靖二)

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