3月10日 平成とは アップル狂想曲「1」

朝日新聞2019年3月5日夕刊10面:「Thank you Steve」 店の前に置かれた花束やリンゴに、「Thank you Steve」(ありがとうスティーブ)のメッセージ。不思議な光景だった。2011年10月5日、米アップルの創業者スティーブ・ジョブズが56歳で死去した。私はぢちらかと言えばアナログ派で、アップルに特別な思い入れもなかったが、外出ついでに東京・銀座の「アップルストア」に足を運んでみた。そこは、ファンが集まる追悼の場となっていた。親しい友人でも亡くしたかのように「スティーブは・・」語り出す人までいた。平成30年、社会のデジタル化が進んだ。アップルは、パソコンに変え、音楽をダウンロードする仕組みを広げた。ボタンをなくしたスマートフォン「iPhone」で世界は一変した。ジョブズは、デザインや使い勝手に強くこだわり、社内対立で会社を追われもした。逸話には事欠かなかった。とはいえ、外国企業の経営者の死にここまで感情移入する人たちに驚いた。「いったいこれは何なんだろう」。ジョブズだけでなくアップルという会社にも、ただならぬ思いを抱く人がいると知るのは、さらに2年も経ってからだ。
13年9月、経済部にいた私は、iPhoneの新機種「5s」の発表を取材することになった。舞台はあの銀座の店。発売10日前から人が並び始めていた。一番乗りは茨城県の会社員。有給休暇をとって駆けつけたという。「アップルの革新性にひかれ、業績がいいときも悪いときも付き合ってきた」。キャンプ用のいすやテーブルを用意。折からの台風にも耐え、ようやく発売日を迎えた。
午前8時。店のドアが開いた。列をなした約700人を、そろいの青いシャツ姿の店員がハイタッチと歓声で招き入れる。携帯を買いに来ただけとは思えない、妙な高揚感と一体感。競合メーカーの人の言葉を思い出した。「アップルはストーリー(物語)を売っている」 =敬称略 (宮地ゆう)

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