3月1日 3社連合 船頭なき再出発

朝日新聞2019年2月23日9面:「ゴーン後」巡り綱引き続く 今月12日。横浜市の日産自動車本社で開かれた決算発表の記者会見に、社長兼CEO(最高経営責任者)の西川広人(65)が急きょ出席した。前会長カルロス・ゴーン(64)の不正について「大きな責任を感じている」と述べる一方、続けて「大事な日産という大きな船を将来に向けて進めていく責任もある」と強調した。口調は滑らかだった。排ガス・燃費データの改ざんや、車の安全性能にかかわる検査不正の会見には昨年一度も姿を見せなかったのに、ゴーンの逮捕後に会見に出るのはこれが4度目。「何かみなぎるものを感じる」。西川の変わりように日産幹部は驚く。
西川は「ストカッター」の異名を取るゴーンの下で、購買担当として頭角を現した。社内で「ゴーンチルドレン」と目されてきた男がいま、「ゴーン後」の日産の運命を握る。だが、仏るにー、三菱自動車とともに進む航海のかじ取りは容易ではない。3社の会長を1人で兼ね、扇の要の役割を果たしてきたゴーンが失脚し、3社連合は剛腕でならした「船頭」を失った。重要な経営判断をトップダウンで即決してきたゴーンに代わるカリスマは見当たらない。
合議制に懸念も 西川やルノーの新会長に就いたジャンドミニク・スナール(65)らは1月末にオランダ・アムステルダムで開いた会合で、3社連合の運営を各社の首脳の合議で進めることを確認した。ある日産幹部は「合議制でうまくいっている前例はない」と心配顔だ。一例として第一勧業、富士、日本興業の3行が統合して生まれたメガバンクみずほフィナンシャルグループ(FG)を挙げた。みずほFGと傘下2行のトップを旧3行出身者が分け合う「融和路線」を敷いたが、意思決定の遅れが目立ち、結局みずほFG社長に権限を集中させる体制に改めた。ルノーは、スナールを3社連合の提携見直しを巡る協議の窓口にする構えだ。
会長就任後に初めて来日し、西川らと会談したスナールは16日、「アライアンス(提携)の将来は輝かしい」と記者団に述べた。対話路線への変化を印象づけたが、別の日産幹部も「合議で意見が割れたら、迅速な経営判断ができないのでは」と懸念を口にする。自動車業界では、電動化や自動運転などの次世代技術の開発を巡り、異業種も巻き込んだ競争が激しさを増す。3社連合の内部対立が続くと、経営判断のスピードが落ちて肝心の競争力に陰りが出かねない。
 日産会長が焦点 「ゴーン後」の統合体制をめぐる目下の最大の焦点は、ゴーン解任で空席となった日産の会長人事だ。るにーや筆頭株主の仏政府はスナールを日産の会長に据え、日産への影響力を維持するシナリオを描く。かたや、ルノーに会長ポストを渡したくない日産は「ルノーと日産の課長が同じ人になれば、権力集中の弊害が露呈したゴーン体制と同じことになる」と予防線を張る。ゴーンの不正を許したガバナンス(企業統治)の改善策を話し合うとして、外部の有識者による特別委員会も設けた。3月末までに特別委が提言をまとめる。ガバナンスの立て直しを優先する「大義名分」を前面に打ち出して後任会長選びを先送りし、ルノーの揺さぶりをかわしながら日産優位の新体制をつくる狙いが透けて見える。外部の目による経営陣の監視を強めようと社外取締役の増員も取り沙汰されている。日産はゴーン「退場」を好機とみて、ルノーとのいびつな資本関係の見直しも視野に入れる。だが、3社連合の主導権を維持したいルノーの反発は必至で、仏政府も高い壁として立ちはだかる。日産に対するルノーの影響力が弱まれば、自国の経済や雇用への悪影響が避けられないためだ。
仏政府の信頼が厚いスナールは4月の臨時株主総会で日産の取締役に選ばれ、会長人事を含めた新体制を決める取締役会の議論に加わる。日産の新体制が決まる6月の定時株主総会が両者の攻防の天王山となる。日産幹部には「不平等な資本関係を解消するため、持ち株比率は同じにすべきだ」との強硬論もあるが、両社とも提携解消という「離縁」は望んでいない。対ルノー戦略を練る西川が陣取る日産本社21階CEO室には夜な夜な明かりがともる。西川が休日返上で出社することも多いという。世界が注目する両社の主導権争いの落としどころはどこか。ゴーンを排除し、ゴーンが企てた経営統合を阻止した時点で西川らの目的は半ば達成したと言える。その先は「ルノーが日産株の数%を日産に売って出資比率を若干下げるぐらいしかできないのでは」(日産関係者)。そんな微温的な折衷案もささやかれる。 =敬称略 (木村聡史、疋田多揚、友田雄大、高橋克典、大鹿靖明)

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