29日てんでんこ 音楽の力「5」

朝日新聞2017年8月26日3面:板野友美がまぶしかった。被災地の中学生はやがてAKBのメンバーになった。 人気メンバーの板野友美(26)=今は独立=が本当に目の前にいた。2013年3月、福島県いわき市をAKB48が訪問した。聴衆の中に板野らを見つめる中学3年生がいた。原発事故で広野町から一家で避難していた。その中学生は舞木香純(もうぎかすみ)(20)。その後、オーディションを経てAKBに。15年4月にメンバーとして久々に広野町に戻った。
母校は旧・広野中学校で、放課後の部活中に被災した。家族はその後、広野町には戻らないと決めた。懐かしい校舎は今、ふたば未来学園へと変わった。原発事故の影響を受ける地域の教育を支援しようと、15年春に開校した県立高校だ。
学校の制服はAKBの衣装デザイナーが担当した。校歌をプロデュースしたのは秋元康だ。その縁で、開校から1年半余り過ぎた16年11月、学校で講演した。その質疑応答で、秋元たちが学校づくりになぜ関わるのかと尋ねられた。仕事として稼ぐのか、との意味と受け止めて答えた。「みんな手弁当だよ」
地元出身でもないのになぜ、と不思議に思われたらしい。「外からのボランティアは難しい」。他の被災地で考え方のすれ違いから批判された経験もある。
AKBの被災地訪問はしべてボランティアで、日帰りで移動するメンバーは新幹線のトイレで衣装に着替えた。NHK関連会社の石原真も休みをとって同行する。ほぼ全スタッフがそうだ。訪問活動からは利益を得ないように徹底している。AKBの曲は秋元が作詞する。震災の年の10月に発売された「風は吹いている」はまさに被災地への思いを込めた。
「傍観者にはならない」音楽の力はこう考える。「書物は、すごく良い内容と言われても、意識しないと読まれない。でも音楽は違う。心を閉ざしていても勝手に聞こえてくる。その力はすごい。さらに、はやり歌は必ず思い出の目次にもなる」 歌がテレビやラジオで流れてきたら、はやったころのことを思い出す。
それが震災の風化を防ぐ一助になってほしいと願っている。(山浦正敬)

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