27日 手術・終末期・・・患者の安心のために

朝日新聞2017年7月26日25面:在宅医×病院どう連携 医療や介護が必要な高齢者が自宅で安心して暮らせるようにするには、在宅医と地域の中核病院との連携が欠かせない。だが、患者本人の意志に反して病院に入院したまま家に戻れなかったり、終末期に延命治療を望まない意思を書面で示しているのに、蘇生処置を受けたりする例が少なくない。在宅医と救急医らが一緒になって課題に取り組むために研究会も立ち上がった。
術後の治療 合同検討 茨城県日立市の菊地セツさん(87)は脳梗塞などを患い、長男夫婦の介護を受けて自宅で暮らす。いばらき診療所ひたちを運営する、医療法人社団いばらき会理事長の照沼秀也医師の訪問診療と訪問看護をそれぞれ月2回受けている。寝たきりの状態が長く続き、食べ物をのみ込む力が弱くなったことから、照沼さんから、栄養を管で直接胃に送り込む胃ろう手術を勧められた。長男(66)は家族で話し合い、手術を受けさせることにした。
手術を受けたのは、在宅療養支援病院の小豆畑病院(同県那珂市)。照沼さんが手術前後に小豆畑病院に赴き、合同カンファレンスに参加。菊地さんの自宅での状況などを伝え、術後に帰宅した際の治療方針などを話し合った。入院中に照沼さんらいばらき診療所ひたちのスタッフが病室に菊地さんを訪れ、退院後のケアについて相談した。
1ヵ月ほど入院したが、長男の妻(66)は「安心して家に戻れると思うとありがたかった」と話す。県内5ヵ所に診療所があるいばらき会と小豆畑病院は昨年1月、在宅医療を受けている患者の容体が急変したり、手術を受けたりする際に円滑に治療し、再び患者が自宅で暮らせるようにするための連携を始めた。両者は別法人だが、患者にとって一つの病院にかかっていると感じられるよう「一つの病院連携」と名づけている。
これまでは在宅医療の患者が急変したり手術が必要になったりした場合、入院する病院探しに苦労することもあった。一度入院すると、自宅に戻りたり希望を患者が持っていても帰れない場合もあった。昨年1年間で、いばらき会から小豆畑病院に紹介した97人のうち、入院したのは66人。その後自宅に戻って再び在宅医療を受けた人は60人に上り、複数回入院した患者も、全てが自宅に戻ったという。
照沼さんは「スムーズに受け入れてくれる病院があるのは、患者さんの望む医療をするうえでありがたい」。小豆畑病院の小豆畑丈夫院長は「急変時に全く知らない救急医に説明を受けても、家族は納得のいく判断ができない。普段診ている在宅の先生の助言や存在は大きい」と話す。
意思に反した蘇生、防ぐ試み 厚生労働省は団塊の世代が75歳以上になる2025年をめどに、地域の病院や在宅医療、介護サービスが連携することで、高齢者が自宅で安心して暮らせる環境をつくる「地域包括ケアシステム」の構築を進めている。市町村が中心になって計画作りをするが、なかなか進んでいない。
4月、「日本在宅救急研究会」が発足した。今月22日、東京都内で在宅医や救急医、看護師らが集まって初めての研究会が開かれ、いばらき会と小豆畑病院の連携についても先進事例として紹介された。研究会では在宅医療を受けている終末期の患者の容体が急変した時の対応についても議論された。在宅でみとることを決めた家族が救急車を呼んで病院に患者が搬送され、意思に反して蘇生処置をする事例が各地で起きている。研究会代表世話人の横田裕行・日本医科大高度救命救急センター長は「在宅と救急のスタッフが同じテーブルで課題を考えるべきだ」と話す。
東京都八王子市の医療機関や消防・自治体などでつくる八王子市高齢者救急医療体制広域連絡会は、終末期の治療についての希望なども書き込む「救急医療情報シート」を活用している。横浜市鶴見区では区医師会が作った「連携ノート」を活用している。ただ、済生会横浜市東部病院の山崎元靖・救命救急センター長は「知らない患者が自宅から救急車で運ばれ、意思が書かれた書面を見せられただけでは事情が十分に把握できないので、すぐ蘇生処置をやめられない。救急医と在宅医が顔の見える関係になっておく必要がある」と話す。(水野梓)

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