27日てんでんこ 音楽の力「3」

朝日新聞2017年8月24日3面:無力感にさいなまれたご当地ヒーロー。「子供には音楽や娯楽が必要」AKB48がやって来る。そんな話を聞きつけた岩手県山田町の被災者らが次々と避難所から会場に向かった。その列を畠山吹雪(45)が追った。 畠山は同県内陸の花巻市在住で、縁のある山田町に震災後すぐに駆けつけた。そのまま、避難所運営の支援や、学校開開に向けた準備の手伝いに入った。
それから2カ月間。芸能人が支援に次々と避難所に現れた。だが一部は、自己PR用としか思えない写真を撮り、自作の音楽CDを被災者に販売した。「ふざけるな」と憤りを膨らませていた。
そこに今度は、人気絶頂の「国民的アイドルグループ」だ。何かあればすぐにAKB側に怒鳴り込むつもりで身構えた。本業はご当地ヒーロー「マブリットキバ」だ。名前の由来は「守る人」の方言読みと、動物が生きていくのに必要な牙。県内の観光PR行事に出演してきた。
だが、津波の前に無力だった。婚約者や同僚、何度も仕事で呼んでくれた山田町・・・。どれも守れなかった。仮面を脱ぎ、謝罪するように支援に打ち込んだ。最大2千人いた避難所は、規律を守るのが大事な仕事だった。子供の響く声や足音に周囲から文句が出る。騒いでトラブルにならないように、支援で届いた玩具や音楽CDは子供に渡さないようにした。
AKBが現れたのは5月22日。初の被災地訪問で、南隣の同県大槌町に続くライブだ。楽曲に合わせて、子供たちも歌い、はねていた。避難所では見せたことのないような笑顔が並んでいた。「避難所の安全を守るためと、大人の論理で子供を抑えつけ過ぎていたのかもしれない」。娯楽や音楽だけでなく、笑顔も奪っていたと気づいた。
その夜、避難所運営の反省会で話になった。「子供ってあんなに笑うんだな」「どうだべ」と自治会長が規則の変更を提案した。支援のおもちゃもCDも子供に配ろう。品難所の大型テレビで音楽番組を見るのも許そう。歩き回ってもあまり目くじらたてないようにしよう。
ネット上ではAKBに「売名」「被災地商法」の批判も流れた。だが、子供たちの笑顔が、かき消していく。
(山浦正敬)

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