22日 オトナになった女子たちへ 益田ミリ

朝日新聞2017年8月18日25面:譲れないことだけ大事に 知っているけれど個人的にはあまり使わない大阪弁、というのがある。たとえば「ようけ」。「たくさん」という意味だが、わたしは「ぎょうさん」と言う。うちの父は「ようけ」派だった。ただ、「ぎょうさんの人やった」と、「ぎょうさん」も使っていた。もう、その場の感覚なのだろう。
感覚といえば、「こんだけ」と「こんなけ」もある。標準語では「これだけ」。「これだけしかないの?」は、大阪弁では「こんだけしかないん?」であるが、わたしは「こんだけ」ではなく「こんなけ」。「な」なのである。母も同じだ。とはいえ、両方使うのだった。それで、先日、迷ったのである。自分の連載の中でどちらを使うか。どちらも言うしなぁ。どっでもええねんけどなぁ。
「こんだけ」のほうが、大阪弁に馴染みがない方にもわかりやすいし、親切だろう。でも、ま、ここは自分がよく使うほうでいこうかな。と、「こんなけ」を選んだところ、校閲から「こんだけ」ではないか?という問い合わせが。愛用の「新版 大阪ことば事典」を引いたところ、「コンダケ」はあったが「コンナケ」は載っていなかった。ええっ、そうなんや! ちなみに事典では「ようけ」は「ヨォケ」であった。
方言は、地域で少しずつ違ったり、世代によって変わったりもする。我が家以外にも「こんなけ」派はいるかもしれぬが、わたしは、すぐさま「こんだけ」と書き直した。そんな、大阪弁の話である。
ということを書きたかったのではなく、今日はここからの「譲る、譲れない」についてを書きたかったのだった。もともとわたしは、どっちを使ってもいいなぁと思っていた。だから、サッと変えたのである。世の中、自分がどっちでもいいときにまで我を張ると、自分もまわりも不幸にする。たまに街中にもいる。引くに引けなくなる人。そこまで自分を通さなアカンか? 本当に譲れないことだけを大事にすればいい。そういう大人の話である。(イラストレーター)

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