21日 転勤なし正社員 制度広がる

朝日新聞2017年7月17日27面:子育て・介護に配慮 待遇面では懸念 転勤のない正社員の制度を、全国展開する企業が相次いで導入している。社命でどこへでも赴任することがなくなり、子育てや介護の制約があっても働き続けられると評価する声がある一方、給与のカットや昇進の制限など、待遇引き下げへの懸念もつきまとう。
給料減るが「家族と」 コールセンター大手、ベルシステム24で正社員として全国転勤をしてきた杉浦弘幸さん(41)は今年3月から、転勤のない地域限定正社員になった。ずっと名古屋市の中部支店で働き続ける道を選んだ。入社20年目。郷里の愛知県半田市に近い中部支店を振り出しに、福岡→東京→福岡と転勤を繰り返した。福岡に転勤していた昨秋、地域限定社員への転換を募る初の社内募集があり、手を挙げた。同社は北海道から沖縄まで13市町に拠点があり、今後も転勤が続く可能性があった。妻と長男(9)、次男(4)の4人家族。これまで家族連れで任地を回ってきたが、転勤族のままでは子供の進学や郷里の両親の老後が気がかりだった。
だが、待遇が下がるのは悩ましかった。地域限定正社員になると、基本給が5%減り、ボーナスは6割も減る。管理職にも登用されなくなる。「上をめざしたい気持ちはあったが、家族との時間を大切にしたい」と決断した。
同社の制度では、地域限定正社員になる場合、現在の勤務地での転換が原則。新卒で入社後、4年目から選択できる。初の募集だった今年3月だけは、特例で最初の勤務地に移ることが認められた。全国転勤がある正社員と地域限定正社員を行き来することもできる。ただ、地域限定への切り替えは毎月受け付けているが、その逆は全国規模の人事異動に影響するので、年1回に限られている。全正社員約1100人のうち、地域限定は約100人。人事担当者は「環境の変化を通じて人は成長する。転勤は重要」と前置きしたうえで、「転勤を希望しない人も増えている。長く働いてもらうために選択肢を設けた」と話す。
地域限定正社員の導入は他社にも広がる。百貨店の高島屋や総合スーパーのイオンテール、「モスバーガー」を運営するモスストアカンパニー、警備のセコムなど、全国展開する大手を中心に新制度として打ち出すところが目立つ。
企業によって浸透具合はまちまちだが、人手不足を見据えた対応である点は共通している。セコムの山中泰男社長は、地域限定正社員の導入によって「満足のいく採用結果が出せている」と手応えを見せる。高島屋の山口健夫人事部長も「いい人材が採れれば、地域限定を増やしたい」と話す。
人生に見通し■格差固定も 地域限定正社員はさらに広がり、企業に定着していくのか。専門家の見方は割れている。労働政策研究・研修機構の萩野登副所長は「ライフプランの見通しが立てやすくなる」と評価する。機構が昨年実施した転勤に関する調査によると、過去3年間に配偶者の転勤を理由に退職した正社員がいた企業は33.8%。共働きでの子育てや親の介護など転勤しにくい事情を抱える人が増えている現状を踏まえた取り組みだととらえている。
一方、賃下げや解雇につながると警戒する向きもある。東京管理職ユニオンの鈴木剛委員長は「転勤できるかどうかで社員を分類し、転勤できない人の給料を下げる人件費の抑制策の面がある」と指摘。働く地域が限定されると、仮に勤め先の拠点が閉鎖されれば解雇のおそれが高まるため、「雇用が不安定になりかねない」とも危惧する。
企業の転勤制度に詳しい法政大の武石恵美子教授は、地域限定正社員の制度はうまく運用しないと、かつての総合職と一般職のような身分格差の固定化を招く可能性があるとみる。「頻度や対象を絞り込むど、転勤制度そのものもあわせて見直す必要がある。転勤に人材育成の校歌を期待する大手企業は多いが、費用対策効果を検証し、転勤以外の育成策も考えるべき時期にきている」とも指摘する。(土屋亮、贄川俊)

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