2月6日 平成とは 消費税「3」

朝日新聞2019年1月31日夕刊12面:買い物の後、墓参りへ 消費税が始まった1989年4月1日、首相の竹下登は都内で買い物をする予定だった。ただし、行き先は伏せられていた。消費税反対派が集まって、混乱を招く懸念があったからだ。流通業界を担当していた私は「行き先を探れ」との指示を受け、あちこち探りを入れたが分からない。官邸記者クラブから東京・日本橋の三越だと連絡が来たのは午前9時半ごろ。駆けつけたが、すでに要人警護のSPや店の警備員らが竹下の動線を確保するために並び、近づけない。午前10時40分すぎに三越に着いた竹下夫婦は、1階のネクタイ売り場と地下の鮮魚売り場で買い物をして回った。私は遠巻きに動きを追うだけ。官邸クラブの「番記者」らはすぐ近くにいて、ぶら下がりシ取材で肉声を聞いて記事にした。若手の経済記者だった私は「政治記者はずいぶん偉そうだなあ」と少しカチンと来た。竹下が三越を去った後、ようやく詳しい取材ができた。案内役を務めた三越社長の板倉芳明は「今年の4月1日は新入社員と消費税が入ってきた」と笑っていた。三越を後にした竹下の行動も明かされていなかった。
向かった先は東京・府中の多磨霊園。元首相の大平正芳の墓参りだった。大平は「一般消費税」の導入を試みたものの猛反対で断念し、翌80年の衆参同日選のさなかに急死している。「反対派」を近づけぬ形での買い物パフォーマンスと、大平の墓前への消費税導入報告は、無理に無理を重ねて消費税が導入されたからでもある。「こんな状態で消費税は本当に定着するのだろうか」と私は疑問に感じた。
竹下の前任の中曽根康弘も「売上税」法案の廃案に追い込まれていた。自民党支持者も含めて反対が根強く、導入後も流通業界には反対論や見直し論がくすぶり続けた。反対派には歴代首相と懇意だった大物経済人がいた。 =敬称略 (元朝日新聞編集委員・安井孝之)

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