2月4日 平成とは 消費税「1」

朝日新聞2019年1月29日夕刊10面:「損したみたいかな」 1989年3月31日夜。バブル景気さなかの金曜とあって東京ではタクシーがつかまらず、酔っ払いが街にあふれていた。私は、日付が4月1日に変わる少し前から東京・上野のコンビニエンスストア「サンチェーン上野店」にいた。消費税導入の瞬間を取材するためだった。経済記者として、流通や食品などの業界を担当する東商倶楽部に属していた。消費税の導入が決まった後も小売りの現場では、価格表示は内税か外税か、消費税の1円未満の端数は切り捨てか切り上げかといった様々な議論が続き、ついに、この日を迎えた。東商クラブに属する新聞、テレビ各社の記者は、混乱を起こさぬよう同じ店での取材を申し合わせ、上野の店に集まった。時計の針が0時を指す。店員が「0時になりました。消費税をちょうだいします」と頭を下げた。税率は3%。最初の客は高校生だった。500円玉での支払いに、おつの191円と「消費税9円」と書かれたレシートが渡された。
高校生の「ちょっと損したみたいかな」という話を聞き、公衆電話に走った。夜が明けて配る1日付け朝刊向けに、急いで取材内容を伝えるためだ。スマートフォンはおろか携帯電話もまだ普及していない。コンビニ店の前にあった1台はすでに他社の記者が使っていた。近くの児童公園の電話までまた走り、担当デスクに伝えた。大勢の記者が詰めかけるなかで、店員が頭を下げて受け取ったのが最初の消費税だった。それから30年。サンチェーンを訪ねると、店は「ローソンストア100台東上野3丁目店」に変わり、公園の電話はなくなっていた。5年前に撤去されたという。いくつもの政権が倒れた末、平成元年に導入された消費税は、のこ10月に、10%に引き上げられる予定だ。(元朝日新聞編集委員・安井孝之)

 

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る