2月22日 奨学金 地方企業がお助け 新卒採用の呼び水に

日本経済新聞2019年2月16日夕刊1面:肩代わり制度、導入相次ぐ 奨学金を借りた社員の返済を助成する制度を設ける地方企業が相次いでいる。西日本でショッピングセンターを展開するイズミや、北海度が地盤の伊藤組土建(札幌市)が導入し、新人社員や若手社員に適用する。東京から離れた地方は新卒採用が難しく、こうした制度を新卒人材の呼び水にしたい考えだ。
30万円上乗せ イズミは2019年春に入社する新入社員から、奨学金の返済支援制度を取り入れる。入社3年目、5年目、7年目にそれぞれ10万円ずつ、総額30万円を夏季の賞与に上乗せ支給する。内定者へのアンケートなどを通じて調べたところ、大卒の約160人のうち、約半数が利用見込みという。同社は奨学金支援を福利厚生の一環に位置付ける。人事部の沼本真輔部長は「最近は学生が仕事を選ぶ基準として、福利厚生を重視する傾向が強まっている」と指摘。「就職先を決める際に『こうした制度があると助かる』と感じる学生が多かったようだ」と手応えを感じる。奨学金返済の肩代わり制度は婚礼大手のノバレーゼ(東京・中央)や大和証券グループ本社など、東京に本社のある企業も導入している。ただ、最近は福岡が地盤の三好不動産(福岡)やコープさっぽろ(札幌市)、愛媛に本社を置く大型スーパーのフジなど、地方に構える企業の動きが目立つ。背景にあるのは、地方企業が直面する新卒採用の難しさだ。
日本生命保険が18年7~9月に全国の約3600社を対象に実施した調査によると、48%の企業が「新卒採用が困難」と答えた。地域別では、関東の42%に対し、北海道が59%、甲信越・北陸が58%に上った。東京より地方で厳しさを感じる企業が多い。
地元希望は50% 就職情報のマイナビ(東京・千代田)が18年4月にまとめた調査も、こうした状況を裏付ける。19年に卒業予定の大学生で地元就職を希望する割合は50.8%13年卒では60%を上回っていたが、低下傾向が続く。奨学金の返済支援制度は、地方企業のこうした逆境を跳ね返す一つの武器になりうる。伊藤組土建は18年4月、新入社員向けにこうした制度を設けた。制度導入後に入社した社員のうち、勤続1年以上で勤務態度が優れた社員に対し、毎月1万円を給与に上乗せする。支給上限額は200万円。19年4月から上乗せ支給を始め、6人に適用予定だ。そのうち一人、松下育生さん(23)は約200万円の奨学金を借りた。毎月1万3千円を返しており「上乗せ支給でかなり楽になる」。多田亜紀子人事課長は「新制度の導入後、会社説明会の集まりがよくなった。採用難を乗り切る突破になりうる」と強調する。奨学金を借りていない若手社員からの不満は特に聞かれないという。就職情報大手、ディスコの武井房子上席研究員は、奨学金を支援する制度は「学生をひき付ける対策のひとつになる」と指摘する。同様の制度を導入する地方企業が広がれば、地元での就職を考える学生が増える可能性がありそうだ。
卒業後、若者の負担重く 奨学金制度を運用する日本学生支援機構によると、2017年度に同機構から奨学金を借りた学生は129万人。全国の学生の37%が利用している計算だ。大学生1人あたりの貸与額は有利子の場合で343万円。若者には返済負担が重く、3カ月以上延滞してしまう人は約16万人に上る。延滞3カ月以上で、信用情報機関が登録。クレジットカードをつくれなかったり住宅ローンを組めなかったりする可能性がある。自治体でも奨学金の返済を後押しする動きがある。
京都府は17年度、奨学金を肩代わりする企業に対し、負担金の半分を補助する制度を導入した。支援期間は最長6年間。入社1~3年目の社員の場合、府補助を含めて年間18万円まで支給できるようにした。制度の利用は低調だ。17~18年度は約1400人の利用を見込んだが、17年度は14社35人、18年度も24社60人(19年1月末)にとどまる。府は「制度の潜在需要は高い」(担当者)として、19年1月から支給要件を一部緩和している。(後藤健、山中博文、天野由輝子)

 

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る