2月21日てんでんこ 計画運休「4」痛感

朝日新聞2019年2月16日3面:「お客様がいなくて良かった」。炎に包まれる駅舎を前に立ち尽くした。 炎と爆発音に包まれる駅舎を前に、駅員3人はなすすべなく立ち尽くしていた。台風21号が直撃した昨年9月4日午後1時すぎ、南海電鉄尾崎駅(大阪府阪南市)の券売機と配電盤から火が出ているのに駅員が気づいた。消火器で消し止めたもののつかの間、再び配電盤から火の手が上がり、一瞬で天井まで達した。119番通報を4回も5回もしたが、話し中。「これ以上は危険だ」。消火を諦め、外に避難した。消防車は午後2時に到着し、午後3時半ごろようやく鎮火した。
全焼だった。幸い、駅の利用客はいなかった。台風の直撃に備え、前日夕に正午までで運転を取りやめると予告していた。列車が止まって1時間後の火災だった。強風で架線が切れ、配電盤がショートしたとみられる。尾崎駅は1日約1万人が利用し、特急も停車する主要駅の一つ。架線が垂れ下がったホームを見て、駅員の一人は「お客様がいなくて本当に良かった」とホッと胸をなで下ろした。南海にとっては初めての計画運休だった。
踏み切った背景には2017年10月の台風21号の教訓があった。大雨による急な増水で橋脚付近がえぐられ、尾崎駅手前の男里川にかかる橋が沈下。橋を渡った列車の一部が脱線し、乗客5人がけがをする事故が発生した。さらに夜になって運休区間が広がり、難波駅では列車内で約100人が夜を明かした。運転保安課長の斉藤俊也(46)は「早めの運転見合わせの必要性を痛感した」と話す。事故の直後から、計画運休を念頭に置いた判断基準の見直しに着手した。それまでは台風の規制値を超えてから判断を下すのが通例だったが、気象予報で沿線の規制値を超える可能性が髙ければ、前日からでも運休を決めることにした。気象予報会社「ウェザーニューズ」との契約も見直し、雨量に加えて沿線の風速の情報も得るようにした。
迎えた昨年9月、台風21号は非常に強い勢力で和歌山県から大阪府南部の同社沿線をなぞるように進むと予想された。社内からは斉藤は「安全が優先」と押し切った。想定した中で最も早い正午で全面運休。その判断が火災による混乱を最小限にとどめた。一方、この台風でギリギリまで運転を続けた私鉄もあった。
(波多野大介)

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