2月21日 サザエさんをさがして 電子計算機

朝日新聞2019年2月16日be3面:高度成長期の「魔法の箱」 列をなす患者に、たちどころに正確な病名を下し処方箋を指示するのは、診察室に鎮座まします電子計算機。コンピューターより電子計算機と呼ぶ方がしっくりくる。一方で「誤診が多い」と言われるお医者さんは浮かぬ顔・・。AI(人工知能)を使った医療現場のような光景が漫画になったのは高度成長期まっただ中の1968年。この年に出荷された電算機は、論理素子が全てIC(集積回路)になり、数年前まで主役だったトランジスタを駆逐した。小型化、高速化、低電化が進み、産業界の利用が急伸。69年版コンピュータ白書によると稼働台数は前年より6割増えて4171台、業界の年間売り上げは1425億円。3年で実に5倍になり、ラジオの生産高を抜き、電子製品でテレビに次ぐ2位の座に躍り出た。小型化したとはいえ、本体に記憶装置、プリンターなどを加えれば優に1部屋を占有し、計算速度も最新の大型コンピューターの30万分の1しかないのだが。
富士通で計算機の保守に当たっていた池田洋一さん(76)は「小型化し安くなって、1年前まで縁のなかった企業も我も我もと導入し『ウチにも入った』と胸を張る雰囲気があった」という。24時間稼働も多く、保守要員15人が泊まり勤務で対応、一晩で4.5件の修理依頼も珍しくなく「電算機の不調が2時間を超えると重要障害報告書と始末書を書かされる。短時間の修復に必死だった」。実社会でも庶民の興味を引く電算機の利用法が次々に現れた。65年秋、東京のデパートが「コンピュータ結婚相談」を始めて人気を博し、67年春、性格や興味など70の質問に答えると1分で中高生の進路適性を示すシステムを社会心理学者らが開発。国立国語研究所は、新聞記者から日本語の語彙の使用頻度を初解析。電算機に詰将棋を解かせたら「アマ初段の腕前」という記事もある。電算機がものした絵画や彫刻を評する記事「電算機による”芸術創造”」が掲載されたのは68年5月だ。
「サザエさん」もこの時期、2年で4回、電算機をネタにしている。初登場は67年7月。サラリーマンが何度も操作すると「部長にはサウナ風呂の回数券」とオススメの中元の品が出る。2回目は68年6月で、原稿料が安いと不満をこぼす漫画家が、ペンやインクの使用量、会心の作品、ファンレターなどを読み込ませると、適正額は今の4分の1にも満たない。そして3作目がこの医療への応用だ。いずれも各種データを読み込ませれば、瞬時に正解を導き出してくれる「魔法の箱」だった。 「50年も前なのにAI医療を予見している」と驚くのは千葉県の国保旭中央病院副院長で総合診療医の塩尻俊明さん(55)。だが、AIが医師に取って代わるのは「10年先もまだ難しいだろう」という。まず、患者の訴えるあいまいな症状を医学的に的確な言葉に翻訳する能力をAIが獲得するのは難しい。さらに内視鏡やMRIに病変が映らない心因性の痛み。医師なら生活の様子を聞き出して原因を推察できるが、AIにそれが可能か。病状の変化に応じた診断ができるか、などなど。「検査値だけに頼ることなく、触診や丁寧な問診で患者の病歴や症状を見極め、的確に診断を下せるのは人間だけ。画像診断などAIの得意分野を生かし、補助診断ツールとして生かすべきだ」(畑川剛毅)

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