2月2日てんでんこ 首長たち「2」

朝日新聞2018年1月24日3面:知事は言った。「ここまで来るとは、7年前には考えられなかった」 昨年12月20日、福島県大熊町の町長、渡辺利綱(70)は、県知事の内堀雅雄(53)と町の南端にある造成地に立っていた。そこに2019年3月、2階建ての新しい町役場が完成する。大熊は11年3月の東京電力福島第一原発の事故で、全町避難がいまも続く。事故当時、副知事として避難の対応に当たった堀内が、渡辺に言った。「ここまで来るとは(事故があった)7年前には考えられなかったです」町内の放射線量が低い地域に、役場に加え、町民が住む公営住宅や、買い物ができる施設をつくり、新しい街にするー。渡辺が、そんな構想を打ち出したのは4年前だ。だが、町民からの風当りは強かった。「町長、夢物語だ、現実を直視しろ」
約1万1千人いた町民の96%は、放射線量が高くてバリケードで閉ざされた帰還困難区域に家があった。渡辺は焦っていた。事故のひと月後には、避難先の福島県会津若松市で役場と学校を再開し、約4千人の町民が近隣にまとまって暮らすことができた。しかし、避難から2年たって聞いた町民アンケートの結果に衝撃を受ける。「大熊町に戻らないと決めている」と答えた人が42%に上った。その9ケヵ月後のアンケートでは67%にまで増えた。
帰町に向けた具体的な目標を掲げなければ、故郷への気持ちは薄れる一方だー。構想の公表後、中間貯蔵施設の建設を地元で受け入れるかどうかが焦点になった。原発事故伴う除染で県内各地で出た汚染土を保管する施設で、「区には「30年以内に県外で最終処分する」と固定化しない約束をしたが、それを信じる住民は少なかった。
町民向けの説明会が県内外で開かれることになり、町の担当課長が渡辺に尋ねた。「町長、反対意見が多かったら、受け入れない、ということでいいですよね」ふだん物静かな渡辺が声を荒げた。「何を考えているんだ。ほかに受け入れてくれる自治体がどこにあるんだ」町民の避難で、県内の各市町村には助けられた。その恩に報いたかったし、何より、中間貯蔵の計画が進まなければ、町内の除染も遅れ、自身が打ち出した復興構想も遠のく。渡辺に迷いはなかった。(池田拓哉)

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