2月18日てんでんこ 計画運休「1」決断

朝日新聞2019年2月13日3面:異例の前日の全面運休予告。「ほんまにやるんですか」。司令員らは戸惑った。 近畿地方に狙いを定めるように進む「非常に強い」台風21号の行方を、JR西日本岡山メンテック社長の江尻憲昭(63)は案じていた。「前もって列車を止めた方がいいな」昨年9月3日、JR西は京阪神エリア全24路線で翌日の列車運休を予告した。いわゆる「計画運休」だ。4日正午ごろに全ての列車を止めた結果、立ち往生もなく、帰宅困難者が発生するなどの目立った混乱もなかった。
JR西が初めて京阪神全線で計画運休に踏み切ったのは2014年10月の台風19号のとき。江尻は当時、輸送計画を指揮する大阪総合指令所長として判断を迫られていた。920ヘクトパスカル、九州・四国から近畿を横断・・。最接近3日前の10日午後5時、施設や電気などの担当者との最初の打ち合わせで江尻は言った。「ど真ん中(直撃)やったら前日に止める」。関西一円、路線延長900㌔超の運休予告は例がない。「ほんまにやるんですか」。指令員らは戸惑っていた。12年6月に指令所長になって以来、台風やゲリラ豪雨で路線の盛り土崩壊が相次いでいた。14年8月の台風11号では始発から間引き運転となり、大半の路線で昼過ぎから運休。お盆の混雑と重なって55万人に影響が出た。JR西社員が判断に迷った時、念頭に置くべき教訓がある。107人が死亡した05年の宝塚線(福知山線)脱線事故だ。以来、「安全優先」の企業風土をつくると誓約する。
江尻は腹を決めた。1週間前の18号で近畿の一部路線で始発からの運休を前日に決め、午前9時に再開できた好例もあった。「全面運休や」。19号が京阪神に直撃するのは13日夕から夜の見通しだ。江尻は13日午後2時に間引き運転を始め、午後4時に前線運転取りやめの工程で上司の承諾を得た。12日正午、テレビ会議で京都、大阪、神戸の各支社に伝えた。大阪支社福支社長の大野泰弘(52)は「え、もう決めちゃう?」と驚いた。初の全線での計画運休決定の瞬間だった。周囲には潔く見えたが、江尻は「内心はドキドキ。外したらどうしようって」。不安を抱えたまま翌日を迎えた。(波多野大介) =文中は敬称を略します。
◇ 激甚化する災害に備え、鉄道の計画運休が定着しつつある。社会の動きを止めかねない判断をめぐる鉄道会社の葛藤迫った。

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