2月18日 消えゆく墓

東京新聞2018年2月11日26面:老いる町 減る檀家 兵庫県南あわじ市。淡路島にあるこの町から人が減り始めたのは、1995年1月17日、隣接する同県洲本市で「震度6」を観測した阪神大震災の後からだ。町は400年の歴史を持つ「淡路瓦」を地場産業に栄えてきたが、震災で多くの家屋が倒壊した原因が「重い瓦のせいだった」との風評が広がり、出荷が減少。人口は10年前の約5万2千900人から5千人近く減り、65歳以上の割合を示す高齢化率は33.5%に達している。
「人口とともに、寺から檀家が減っていく」。南あわじ市内にある日光寺で、森田俊寛住職(35)がつぶやいた。約1万平方メートルの墓地には年代が分からない土葬の墓を含め、千基を超える墓石が並んでいる。「うち数百基は『仏さん』ではなく、誰も世話をしない『ほとけさん』の墓だ」 使用者が分からない「無縁墓」は年4千円の管理料が請求できず、寺の負担で更地にしても買い手が見つかる保証はない。震災前に850軒ほどあった檀家は、約半分の440軒にまで減った。
3~4年前からは「墓じまい」が年に10件ほどある。日光寺の段かでタマネギなどを栽培する農家の女性(69)は、将来の墓じまいを夫(68)と話し合っている。40代の娘二人は結婚して実家を出ており、後継ぎはいない。墓は女性の父親が70年ごろに建て、両親と祖父母の遺骨が納められている。女性は「みんな一度取り出して、永代供養墓に入れるしかないんかな」と考え始めている。
葬儀や法要のお布施、墓地管理料が主な収入源の寺にとって、檀家の減少は寺の存続に直結する。宗教専門紙「中外日報」の2015年の調査によると、曹洞宗、浄土真宗など十大宗派の約6万2千寺のうち、住職がいない、もしくは代理の住職が兼務している寺は、少なくとも全国で1万2千寺に上った。
石川県加賀市。JR北陸線の大聖寺駅から徒歩10分ほどの実性院で昨年6月、71歳だった住職が亡くなった。江戸時代の地元藩主の菩提寺で、檀家は五十数軒。後継者はおらず、福井県あわら市の僧侶が兼務している。その僧侶も87歳と高齢。法要や葬儀で加賀に足を運ぶのは月に2回ほどだ。寺の経理や墓参者の対応には、亡くなった住職者の妻石原満理さん(70)と檀家総代の田中豊さん(71)が無報酬で当たっている。ただ、林の斜面に点在している墓の管理は重労働だ。「約百五十基。体にこたえる」田中さんは8年前、病気で妻を亡くした。実性院には本家の墓もあるが、田中さんは妻のために新しい墓を建てた。3人の子どもは故郷を離れて暮らす。将来、戻ってくる予定はない。
寺の世話をしながら、週に一度は妻の墓に手を合わせる。自分もいつか入る墓。体が動く限りは「守る」と決めているが、高齢化した檀家や都会に出て行く跡取りの姿を見ると、守る世代が消えてしまうのではなかいと不安になる。 =おわり
(取材班=青柳和敏、小笠原寛明、土門哲雄、杉藤貴浩、田嶋豊、佐藤浩太郎)

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