2月18日 平成とは 奔流TOYOTA「1」

朝日新聞2019年2月13日夕刊10面:「五輪の慣例」動かした 愛知県豊田市トヨタ町1番地。トヨタ自動車本社の一角にある企業博物館、トヨタ会館を訪ねた。世界中のアスリートの躍動が大画面に映し出され、社長の豊田章男(62)が「あなたの不可能に挑戦しましょう」と英語で語りかける。そしてトヨタのロゴとともに五つの輪が浮かび上がった。「特権」を生かして世界で続ける企業ブランドの広告だ。東京・内幸町の帝国ホテルで2015年3月、豊田章男は国際オリンピック委員会(IOC)の会長トーマス・バッハ(65)と調印式にのぞんだ。世界の自動車メーカーで初めて、トヨタが五輪の最高位スポンサーとなった。
名古屋本社で、トヨタ担当のキャップとして原稿をとりまとめていた私に、同僚から記者会見の様子が次々に送られてきた。日本と並ぶ自動車大国ドイツ出身のバッハは、トヨタが掲げる「イノベーション(技術革新)と持続可能性」がIOCの理念と共鳴したと説明した。スポンサー料は10年で1千億円超とされ、従来の相場の4倍以上だ。
最高位スポンサーは1業種1社がルールで、全世界で独占的に五輪のロゴをPRに使える権利がある。各国の五輪組織も同業他社をスポンサーにつけられない。あるトヨタの役員が解説してくれた。3万点の部品でつくる自動車は裾野が広い「国旗を背負う産業」でもある。だからIOCは自動車メーカーを最高位スポンサーにしてこなかったのだ、と。
私は06年9月にトヨタ担当になり、東京と名古屋を転勤で行き来しつつ、経済記者として自動車業界を見てきた。五輪スポンサー就任は、激しい流れを進み、自らもその源となるトヨタが、販売台数や利益とは違う次元の世界トップになった瞬間だったと思う。集金雇用、系列、カイゼン、トヨタは最も日本的な企業だった。その歩みは、平成の日本経済の歩みをも映し出す。=敬称略(大日向寛文)

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