2月16日 納骨堂迷う線引き

東京新聞2018年2月8日28面:「消えゆく墓」 病室の窓の向こうで重機が土を掘り返す。新生児室から、赤ちゃんの泣き声が聞こえてくる。千葉県浦安市の佐野産婦人科医院に思いもよらぬ知らせが届いたのは、昨年4月のことだ。「隣接地を購入して寺と納骨堂を建てる」。訪ねてきたのは市内にある千光寺の伏島泰全住職。「納得できない」と話す今野秀洋院長(44)に、住職は「法律や条例に違反していない」と告げた。
建設の理由は、東日本大震災による液状化で傾いた建物の移転。その場所として不動産会社から買ったのが、東京メトロの浦安駅から徒歩2分ほどにある約450平方メートルのアパートの跡地だった。隣接する佐野産婦人科では、年間約600人の赤ちゃんが生まれる。今野院長は寺と納骨堂の建設計画に反対し、医師会などの協力で約7千人の署名を浦安市に提出した。ただ、市は「条件に即している以上、駄目だという理由は成り立たない」。今野院長は「もうここではできない」と、病院の移転先を探している。
墓が郊外の一戸建てならば、納骨堂は都心のマンションだ。厚生労働省の衛生行政報告例によると、納骨堂は2016年度末で全国1万2440カ所にあり、1990年度に比べて大幅に増えている。東京都で2.1倍、愛知県は1.8倍、大阪府は2.6倍。ビル型の新設が多い。
墓石の撤去や移転を伴う「改葬」が増える中、納骨堂には狭い敷地に多くの遺骨を納められる利点がある。ただ、経営主体は自治体や宗教法人などに限られるため、資金力がある企業が寺と手を組む新たなビジネスが生まれている。2013年4月、東京の都心に地上5階、地下1階の納骨堂「赤坂浄苑」がオープンした。永代使用料などを含めて、1区画150万円。金沢市に本院がある曹洞宗「電燈院」が経営し、販売は仏壇仏具の大手企業が請け負っている。オープンから1年がすぎた14年6月、東京都は赤坂浄苑に固定資産税と都市計画税の課税を通知した。最終的な税額は約400万円。電燈院は納骨堂も「非課税」に墓地と同じだと主張して提訴したが、東京地裁は「宗教団体の主目的を実現するために使われていない」として棄却した。
都庁第一本庁舎の23階、固定資産税課。小林孝幸課長(46)が「社会通念上、宗教活動といえるのかどうかが、課税、非課税の判断基準になる」と説明した。課税対象の納骨堂は、電燈院以外にもあるという。一方、赤坂浄苑が事実上の収益事業とみなされた伝燈院の角田賢隆副住職(38)は「課税義務があるなら負う」としつつ、「ある程度の収益がなければ、寺も納骨堂も永続性を保てない」との思いを明かす。
遺骨の新しい安置場所として増え続ける納骨堂について、厚労省の担当者は「墓と同列。埋めるか、建物に納めるかだけの違いだ」と説明する。ただ、墓のように非課税なのか課税するのか、判断は自治体に委ねられている。
東京都は課税に踏み切ったが、小林課長は考える。「ビジネスの側面もあるだろうが、納骨堂もお墓もように『神聖な場所』という見方ができるのではないか」。墓地理葬法にも地方税法にも規定はなく、現場でもどかしさを感じている。

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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