2月16日 サザエさんをさがして サプリメント

朝日新聞2019年2月9日be3面:ごちそうは錠剤? イヤダ~ 桃の節句、サザエが「ごちそう」として、ワカメの前にお盆に載せて運んできたのは栄養素の詰まった錠剤・・! 実はサザエの未来の予想だったが、その錠剤への期待は、60年後の今、健康食品として錠剤やカプセル形のサプリメントが世にあふれている状況を見ると、なんとも予言的だ。「今の漫画としても通用しますね」と驚くのは職人の機能性に詳しい島根大学医学部付属病院臨床研究センター教授の大野智さん(47)だ。「イヤダ~」というワカメの叫びもポイントだという。「栄養など機能ばかり求めてしまうと、味や香りを楽しんでおいしく食べるという食事の本質が忘れ去られてしまうのは今も同じ」ただ、1958年の掲載時と今は「ごちそう」の概念が違うと大野さんは言う。当時は栄養不足が解消されようとしていた頃だ。「50年代までは人が生きていくうえで必要なカロリーや栄養素をそろえることがごちそうでした」
60年代に入り、高度成長が本格化、栄養状態が改善すると、食品は栄養機能だけでなく嗜好性も重視され、味や香りの研究が進む。インスタント食品などの加工品の開発も進んだ。さらに80年代以降、飽食・偏食の時代、健康志向が高まると様々な機能をもつ食品が開発される。90年代半ば以降「サプリメント」が登場、一気に市場が拡大した。サプリ大国の米国からの外圧がいっかけで、旧厚生省が規制緩和を推進。ビタミンを皮切りに医薬品にしか許されていなかった錠剤やカプセル形状で食品として売られるようになったのだ。「サプリメントは足りない栄養素を少し補ったりする食品。食事代わりや薬のような効果を期待するのは禁物」と大野さんは釘をさす。
とはいえ、今やサプリメントを常用している人は多く、調査会社の富士経済によると2018年、錠剤、粉末型の健康食品とシリーズサプリメントの国内市場は約9300億円にのぼるとみられる。「日本のあいまいさがサプリメントを紛らわしくしている」と「医療情報研究所 エス・アイ・シー」取締役で薬剤師の堀美智子さん(64)は指摘する。そもそもサプリは錠剤、カプセル、粉末形状の健康食品といわれるが、日本では法的な定義もない。錠剤やカプセルでは特定の成分を多量にとることが容易なため、過剰摂取になることも。内閣府は食品安全委員会のホームページではビタミン・ミネラルをサプリ補給する必要性を示すデータはなく、食べてやせる商品は有害とある。サプリ同士や医師の処方薬との飲み合わせは副作用が出る場合もあり、要注意だ。低栄養素状態の高齢者などにはサプリをすすめる堀さんだが、「どんなものでも飲む前に薬剤師などに必ず相談して」と言う。
15年、安倍内閣の経済成長戦略の一環として「機能性表示食品」制度がスタート。国が安全性や有効性を審査する91年制定の「特定保健用食品」(トクホ)とは違い、企業責任で食品の包装に健康への働きを表示できるようになった。堀さんはサプリをめぐる状況はさらに複雑になったとみる。消費者側も情報をきちんと入手し、賢い選択が求められている。健康に何より大事なのは「主食、主菜、副菜を基本にしたバランスがとれた食事」と大野さんもいう。サザエさんが空想した魔法のごちそうは今もない。(林るみ) *写真:1980年代に入ると、米国の影響でビタミンブームが到来。百貨店などにも「ビタミンショップ」ができた=1982年、東京・池袋

 

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