2月14日 原発のない国へ「5」再生エネの岐路

東京新聞2019年2月7日2面:送電支配地域電力阻む バイオガスを接続拒否 「これで電気をたくさんつくれるのに。まったく、もったいない話です」雪原が広がる北海道帯広市で、小山のように積もった牛ふんを前に、牧場主の野原幸治さん(57)がため息をついた。地元の牧場は乳製品の輸入自由化を受け、生き残りをかけて規模の拡大を急ぐ。野原さんも5年前に比べ牛を150頭に倍増。ふん尿を畑にまくいだけでは処理しきれなくなり、仲間とバイオガス発電を計画した。
ふん尿を発酵させてメタンガスをつくり、それを燃やしてタービンを回す。帯広市を含む十勝地方では32基が稼働中。野原さんら19軒の農家は昨夏、共同で発電所新設を決めた。出力は900㌔㍗。家庭300軒分の電力を賄える。ところが、その電気を北海道電力は「受け入れられない」という。太陽光発電などの新設が進み「送電線に空きがない」が理由だった。十勝では野原さんのバイオガス発電所を含め計27基の新設計画があるが、すべて中に浮いている。野原さんたちも今年4月の着工予定だったが、めどが立っていない。昨年9月の地震では苫東厚真火力発電所が損壊し、北海道全域が停電。搾った牛乳を冷やせず、廃棄を強いられた仲間もいた。野原さんはあきらめきれない。「電源を地域の再生可能エネルギーに分散すれば、災害時も停電を防げるのに」
「空きがない」とされる送電線。京都大の安田陽特任教授が2016年9月からの1年間を調べると、そうでもなかった。十勝から札幌方面に送る日高幹線に流れた電力量は、許容量の21%にとどまっていた。空きが大きいのは全国共通だ。送電線を運用する大手電力各会社は、太陽光や風力、火力など一斉に最大出力で発電しても耐えられるよう、電線の空きを確保している。止まっている原発再稼働に備えて空けている所も多い。
安田教授の調査では、基幹的な送電線の平均利用率は19.4%に低迷。それでも、地域の再生エネが接続拒否されることが相次ぐ。安田教授が例えた。「店はガラガラなのに予約でいっぱいと言われ、外に長い行列ができているおそば屋さんみたい」打開策として、都留文科大学の高橋洋教授は、送電網を大手電力から切り離す発送電分離を挙げる。「電線を運用する会社が独立採算なら、ガラガラにしておいてはもうからない。活用策を懸命に考え、設備増強や工夫が加速する」
北海道で太陽光発電の出力が高まれば、本州の送電網と結んだ「連係線」で、本州に電気を回す。そんな融通で「再生エネを今よりもっと受け入れられる」という。再稼働のめどが立たない原発のために「予約席」を確保する非効率な運用もしなくなるだろう。欧州では発送電分離し、送電会社が独立しているため、再生エネも公平に接続できる。日本でも20年度から分離が義務付けられるが、発電と送電が同じ持ち株会社に入るなどグループ内にとどまるため、形だけに終わる恐れがある。高橋教授が警鐘を鳴らす。「大手の送電網支配が続く限り、日本の電力は大規模集中型のまま。地域分散型の再生エネの障害になる」(池尾伸一)

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