2月14日 争点がずれた名護市長選

東京新聞2018年2月6日26面:白黒つけたのは‥パンダ? 「ネット批判されやすい招致話」 政府・与党が全面支援する渡具知武豊氏(56)が3400票余りの差をつけて初当選した名護市長選。選挙戦では、辺野古基地問題の争点化をめぐる攻防が白熱した。渡具知陣営が争点としてきたのは「パンダ招致」の是非だった。白黒つけたのは、パンダ問題だったのだろうか。
パンダ招致は、現職の稲嶺進氏(72)が1月8日の政策発表会見で言及した。普天間飛行場の閉鎖・撤去を求めることのほか、市内の動植物公園「ネオパークオキナワ」にパンダを招致する活動に取り組むと打ち上げた。翁長雄志知事も同19日の定例会見で「援護射撃」し、半年ほど前からパンダ招致の動きが関係者からあったとし、「大変可能性の熱度は高い」と語った。背景には、名護市が「素通り観光」と呼ばれる事情がある。隣接する本部町には観光名所として知られる「沖縄美ら海水族館」があるが、名護市内に大きな観光資源はなく、経済効果がもたらされないことが課題となってきた。
選挙戦で渡具知氏は、辺野古基地問題にはほとんど言及せず、有権者に配る資料では「人寄せパンダ公約は、市民をダマしていませんか?」と招致話を激しく攻撃。パンダのレンタル料や飼育経費に多額の税金が投入されるとし、「それだけの予算があれば、保育料や給食費、さらにはインフルエンザ予防接種の無料化も実現できる」と主張した。沖縄にパンダ誘致とは意表をつくが、実は起死回生の一手と目する地方自治体は少なくない。
2010年に雄のパンダが死んだ神戸市が新たな貸与を働きかけているほか、仙台市も東日本大震災の復興シンボルとして誘致する計画を打ち出している。ただ、どちらも尖閣問題などで交渉がストップしている。「パンダ外交」に詳しい東京医科歯科大の家永真幸准教授(中国近現代史)によると、パンダは1980年代初頭まで、中国から西側諸国へ盛んに「贈呈」されたが、84年以降、ワシントン条約の規定で「贈呈」はできなくなった。それでも米国や日本では人気が高く、中国にレンタル料を支払ってパンダの「巡業」を誘致する状況が発生。その状況を是正するため、90年代から「繁殖のための貸与」としてやりとりする仕組みができた。
「アドベンチャーワールド」(和歌山県白浜町)などのパンダがその嚆矢だ。借り受ける国は中国に対し、パンダ保護のための支援金として年間100万ドル(約1億1千万円)程度を支払うことが慣行化している。家永氏は、近年はネット世論を中心にパンダ招致が「中国に媚びている」と批判され、高額なレンタル料がやり玉に挙げられがちと指摘。「稲嶺氏にとって基地問題が重要だったなら、争点化に利用されやすい施策を持ち出さなくてもよかったのでは」とみる。
一方、琉球大の我部政明教授(国際政治)は「パンダ論争の影響はほとんどなかったのでは」と読む。「基地以外には、パンダが話題になるぐらいだったところをみると、稲嶺市政自体に失敗があったと有権者に受け止められているようには見えない。得票数を見れば、前回選挙では自主投票だった公明が渡具知氏推薦に踏み切ったことも大きい。辺野古基地に反対する市民は多いが、工事が既に始まったことが説得材料として使われた。むしろその影響が大きかったかもしれない」
(佐藤大)

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