2月13日 原発のない国へ「4」再生エネの岐路

東京新聞2019年2月6日2面:太陽光普及でフル稼働 揚水発電の需要調整に限界 ゲートから約2㌔ものトンネルを抜けると、地下約400㍍の広大な空間に、4基の巨大なモーターが姿を現す。1月下旬、山深い宮崎県木城町の九州電力小丸川揚水発電所を訪ねた。国内有数の出力120万㌔㍗は原発1基分に相当する。山頂近くふもとにある二つのダムが地下水路でつないである。従来は電気が余る深夜に上のダムへ水を揚げ、日中は下流へ流して発電していた。ここ数年は昼夜逆転。太陽光発電の普及で日中に電気が余るようになり、上のダムに揚水し、水の位置エネルギーという形で蓄電して、電力の需給バランスを調整している。
訪ねたのは朝。宮崎は快晴だったが、他の地域は曇り。冷え込み、暖房での電力需要の伸びが予想された。発電中の2号機がうなりを上げた。「前日、天気予報や日射予想を見て、朝のうちは発電、天候が回復する午後は水を揚げる計画を立てました。急に天気が回復し、太陽光の発電が伸びてくれば、いつでも揚水に切り替える準備はできています」九電宮崎水力事業所の重信孝所長が胸を張る。揚水から発電への切り替えは7分半で可能。わずか2分半でフルパワーに達する最新式の発電所は、電力の需給バランスをとるために奮闘する最前線だ。日射量に恵まれている九州では、太陽光を中心とした再生可能エネルギーの導入が進む。陽気の良い春は、電力需要の7.8割を太陽光で賄っている時間帯も少なくない。一方で、九電は4基の原発を動かしている。電力が余って需給バランスが崩れれば、周波数が乱れて大停電を招くとして、九電は再生エネの出力制御を昨年10月以降9回実施。国の給電ルールで、原発より先に再生エネの出力を抑えていよいことになっている。本州と九州の送電網を結ぶ「関門連係線」で電力を融通しようにも、空きがあまりない。増強も検討されたが、昨年3月、経済産業省の認可団体「電力広域的運営推進機関」の検討会で、コストに見合わないとして当面見送りになった。認定NPO法人「環境エネルギー政策研究所」の松原弘直主席研究委員は「九州では原発が4基フル稼働中で、需給を調整する余力を減らしている。せめて電力消費が減る春と秋は原発の出力を下げて、余力をつくるべきだ」と指摘した。電力買い取りの認定を受けたものの、まだ送電網に接続していない再生エネは、太陽光を中心に九州だけで1472万㌔㍗あたり、九電管内の最大需要に匹敵する。接続量は毎月5万㌔㍗ペースで増えているという。再生エネをさらに増やそうにも、揚水発電の調整能力には限界がある。2010年度、小丸川での昼の揚水は22回だった。17年度は約29倍の632回。九電は他に天山(佐賀県、60万㌔㍗)と大平(熊本県、50万㌔㍗)の揚水発電所を持つが、需給実績データを見ると、どれもフル稼働が続く。小丸川のダムの水は濁りが目立った。理由を、宮崎支社土木建築グループの穴井幸康課長が明かした。「昨年の台風で濁りが入りました。その後は連日、ダムの水を揚げ下げしているので、汚れが沈むヒマがないんですよ」
(山川剛史)

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