2月12日てんでんこ 伝える「21」ディレクター

朝日新聞2019年2月5日3面:豪雨で被災した2千人の村。住民による住民のためのテレビが足元を照らす。 「みなさん、こんにちは」。子供をひざに抱いた母親の司会で番組が始まる。人口約2千人、大分県との県境にある山村、福岡県東峰村のケーブルテレビ「東峰テレビ」の番組「村民日誌」。この日の話題は元村民が発案した復興応援歌「ミラクル東峰☆未来GO!!」だ。出演者やカメラマンもすべて村民や出身者。元病院をスタジオに「キラキラ ガガガーンって、すごい歌詞だ」などと、井戸端会議のように会話が弾む。文字放送や風景ばかり流れるケーブルテレビ局が多いが、東峰テレビは「住民ディレクター」と呼ばれる村民たちがボランティアでビデオカメラを持って取材し、編集、放送まで手かける。40分番組を月10本ほど制作し、毎日更新する20分のお知らせとともに流す。
指導役は地方テレビ局出身の総合プロデューサー、岸本晃(65)。東峰テレビが2010年にできてから、農家やタクシー運転手、パート店員など村民を巻き込み、「住民の住民による住民のためメディア」を作り上げてきた。復興応援歌を作詞したのも岸本だ。その成果は、村民3人が犠牲になった17年7月の九州北部豪雨でも表れた。住民ディレクターの一人で農機具販売業の坂本進(70)は避難する直前まで、自宅前を流れる川が増水する様子を映像におさめ、後日、放映された。「記録する大切さは岸本さんから学んだ」 岸本は「災害の記憶を風化させないためには、村民自身で記録、配信することが一番」と話す。住民たちが撮影した映像を集めて放送すると、「自分の地区が最も被害がひどい」と支援を求めていた村民が「もっとひどい所を優先させて」と言うようになった。スタジオは村民が集うサロンのようになり、体験を語り合って励まし合う様子を番組にして流し、視聴者も共感して心を癒やした。
村内を取材して回る住民ディレクターは顔が広くなり、地理にも詳しくなったことで、川があふれて孤立した地域などでリーダー的存在になった。「メディアは、知らない場所の出来事を知るだけでなく、足元を照らす役割もする」そう語る岸本が住民ディレクターをプロデュースし始めたのは、今から20年以上前にさかのぼる。 (東野真和)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る