2月12日 原発のない国へ「3」再生エネの岐路

東京新聞2019年2月5日3面:洋上風力 追い風を待つ 政府、目標値示さず導入遅れ 太平洋に突き出した千葉県銚子の犬若魚港から、海原に巨大な風車がくっきり見える。1月1日に商業運転を始めたばかりの東京電力銚子沖洋上風力発電所。沖合2㌔にあり、海面からの高さは80㍍。0.24万㌔㍗の出力は原発に比べて桁違いに小さいが、東電にとって大きい一歩だ。海に風車を立てて電気をつくる洋上風力発電が、欧州で急速に広がっている。海なら陸上よりも大きな風車を設置でき、強い風が安定して吹くため、効率良く発電できる。住民が騒音に悩まされることもない。東電は2013年から、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と実証試験に取り組んだ。設備が台風や塩害、8年前に起きた規模の津波にも耐えられると分かり、東電は銚子沖を、風車を並べる「ウインドファーム」の有望地と判断した。地元、銚子市魚業協同組合の大塚憲一常務理事も「風車の周りに新たな魚場ができた例もある」と理解を示す。
福島第一原発事故の収束という難題を抱える東電は、再生可能エネルギーに軸足を移そうとしている。洋上風力だけで原発3基分の最大300万㌔㍗を目指す。1月16日には、洋上風力の先端企業アーステッド社(デンマーク)と手を組んだ。東電の小早川智明社長は記者会見で「銚子沖での実現に、より近づくと確信している」と意気込んだ。先進的な英国では17年時点で、計700万㌔㍗近くの洋上風力を導入済だ。同様に海に囲まれている日本では足踏みが続き、まだ2万㌔㍗にとどまる。原発事故後に福島県沖で始まった実証実験では、3基のうち最大の風車(0.7㌔㍗)はほとんど動かなかった。原発も手掛ける三菱重工業の製造だが、機器の不具合が続発。特注の部品交換が頻繁に必要となり、採算が合わずに撤去が決まった。残り2基を造った日立製作所も、風車の製造からは撤退する意向だ。
大手メーカーが出遅れている影響もあり、日本の洋上風力はまだ、追い風が吹いているとは言いがたい。沖合の海域を長期間使うための法整備も、昨秋の臨時国会でようやく実現した。民間の事業計画で環境への影響評価(アセスメント)手続きに入っているのは全国で13カ所、計約540万㌔㍗で、それでも英国に届かない。業界団体の日本風力発電協会(東京)の上田悦紀国際・広報部長は「現状ではアセスだけで4~5年かかる。手続きの効率化が必要だ」と訴える。
工事の面でもハードルは高い。経済産業省資源エネルギー庁の担当者は、油田開発が盛んな欧州に比べ、国内では洋上での作業経験が豊富な事業者が少ない点を挙げる。最大級の0.8万㌔㍗級風車では、柱の長さが90㍍、羽根は1枚80㍍、重さはそれぞれ400㌧もある。これらを生みに出すための港も整っていない。風力発電協会は30年に1千万㌔㍗、50年に3千700万㌔㍗の導入目標を掲げる。その規模は国内の全原発(約3千855万㌔㍗)に匹敵する。国は洋上風力について目標値を示していない。上田部長は「投資を呼び込むためにも、意欲的な目標を示すべきだ」と話した。(宮尾幹成)

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