2月11日てんでんこ 首長たち「9」

朝日新聞2018年2月2日3面:町長選、わずかな差で勝利。復興の賛否を細かく伝えてきたラジオはもうない。 3983票 3789票 2014年4月に再選された宮城県山元町の町長、斎藤俊夫(68)は、漂差「194」をもじって振り返る。「これほど僅差とは、まさに薄氷だ」一騎打ちの相手からは「コンパクトシティーありきの独断専行」と批判された。議会の問責決議もあったが、復興は着実に進んでいると自負していたので、辛勝には驚いていた。
この選挙の開票速報を流したのが、地元の「りんごラジオ」だ。東日本大震災の臨時災害FM局としては異例の選挙特番だった。局長だった高橋厚(75)は東北放送の元アナウンサーだ。震災の8年前に仙台市から移住してきた。斎藤に直言し、震災10日後に役場内にりんごラジオを開局させた。
街の復興には協力するが、選挙で斎藤を支援したわけではない。「町長も町議も住民もいろんな意見を紹介して、良い町にしたい」とあくまで中立を貫いた。住民説明会や町議会も取材し、町への批判も賛意も伝えた。ラジオ局は昨年3月末で閉鎖された。復興が進み、役目を終えたとの判断からだった。
その約4カ月前の16年12月10日早朝、JR常磐線の再開1番列車が新しい山下駅を出発した。ホームでの式典であいさつした斎藤は、涙して声を詰まらせた。駅前に広がる新市街地「つばめの杜」が仙台への通勤・通学圏に入った。駅前スーパーは絵企業を始め、学校にも歓声が響く。内陸に造成した3カ所の新市街地は約2年前には全体の約2割、計55区画が空いていた。ほかで再建する世帯などが出たためだ。
新聞は大きく「ミスマッチ」と町をたたいた。斎藤は言う。「意向調査をするたびに、1人抜け、また1人抜けだったから」そんな状況を細かく伝え、町民に判断材料を提供したのも、りんごラジオだった。被災者以外にも対象を広げ、17年夏、新市街地の区画はすべて埋まった。約30世帯は、町外からの新婚や子育て世代だ。震災前に約1万7千人だった人口は1万2千人台と減少は続く。7年間の復興をどう評価するか。将来像をどう描くか。次の町長選は4月15日。町民の声の交差点だったラジオはもうない。(山浦正敏)

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