2月11日 カード情報どこまで提供

朝日新聞2019年2月4日2面:会員に知らせず捜査当局に利用状況 買い物や商品のレンタルなどで特典がつくポイントカードの運営会社が、会員に知らせないまま利用状況などの個人情報を捜査当局に任意提供していたことが判明し、議論を呼んでいる。IT化が進み、日々蓄積される膨大な個人情報。捜査当局にどこまで、どのように提供するべきなのか。ルールの明確化や透明性の確保が必要だとの指摘も出ている。 令状なし照会書で対応 「捜査協力が社会貢献につながると判断した」。ポイントカード「Tカード」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は1月21日、会員規約への明記なしに会員情報を捜査当局に任意提供していたことを公表した。Tカードはレンタル大手「TUTAYA」やコンビニ、ドラッグストアなど幅広い業界で使われる。カード利用者の趣味や嗜好も含めた多くのプライバシー情報が蓄積される。会員が知らないまま個人情報が捜査当局に提供されていれば、心理的抵抗は大きい。
CCCによると、会員情報の捜査当局への提供は以前、裁判所が出す礼状に基づいて実施していた。2012年、捜査当局が内部の手続きで出す「捜査関係事項照会書」のみで応じるよう、社内手続きを変えた。捜査当局から照会書に応じるよう依頼もあったといい、「長く要請を受けていた。応じるのは法令違反ではないという面もあり、方針を変えた」。個人情報保護方針を1月21日に改訂し、今後会員規約へも記載する方針という。照会書に応じた個人情報の任意提供は同様のサービス各社でも行われ、提供内容は少しずつ異なる=表。情報て京はポイントカードだけではない。交通系ICカード「PASMO」を扱う東京メトロは照会書での依頼に対し、自動改札機の通過記録(カード番号と時刻)を提供。利用者名は提供していないという。
無料通信アプリ「LINE」は「原則礼状を必要とするが、照会書での要請にも適法性などを審議した上で応じる」と説明。利用者の電話番号やメールアドレスといった登録情報や、送信元IPアドレスなどの通信情報を提供している。メッセージの中には暗号化されていないものもあるが、その内容は令状なしでは提供していない。要請件数や応じた割合、その分類については16年7月以降、半年ごとに公表している。(荒ちひろ)
捜査側「必要な内容に絞る」過去に捜査員の私的利用も この問題は、1月23日の衆院法務委員会でも取り上げられた。「ポイントカードというのは、すごく個人情報、プライバシーの権利としてのリスクが高い」。立憲民主党の山尾志桜里氏はこう主張し、CCCに関連して警察庁の対応を尋ねた。同庁の担当幹部は「12年ごろ警察庁かた同社に、都道府県警から捜査関係事項照会書で照会があった場合に必要な回答をもらうため、要請した」と説明した。捜査当局が「捜査関係事項照会書」で企業などから個人の情報を入手する方法は任意捜査の一つだ。刑事告訴法の規定に基づき求められた側は回答する義務があるとされるが、拒否しても罰則はない。照会書は以前から広く使われてきた。警察庁などによると、照会では対象人物の情報を広く求めるのではなく、捜査上必要な内容に絞る。捜査幹部によると、砂金は特殊詐欺の捜査での使用が増え、名前や住所に限って照会するケースが多い。
例えば、搾取金を引き出した犯人とみられる人物が前後にコンビニを利用した場合、その人物の名前などを照会し、個人を特定する。「個々のケースごとにその都度判断しており、乱用はできない」という。ただ、本来の目的から外れ、捜査員が私的に照会するといった不正・不適切な利用も過去に発覚している。また、ポイントカードなどの個人情報の取得は任意捜査でなく裁判所の令状によるべきだとの指摘もある。警察幹部は「通信の秘密にかかわる情報などは令状で取得している」と説明。その上で「捜査関係事項照会の数は膨大。すべてに令状を必要とするのは、捜査、裁判所、業者のいずれの現場にとっても実務上無理だ」と話す。
(編集委員・吉田伸八、小林太一)
「照会数・提供内容 公表を」有識者 米国では13年に、元米中央情報局(CIA)職員、エドワード・スノーデン氏の曝露により、米政府がIT企業や通信業者などから令状なしで個人情報を大量に収集していたことが判明し、問題になった。個人情報を提供していた企業側も批判され法改正がなされたほか、企業側も情報開示を進めた。グーグル、フェイスブック、アップルなど米大手IT企業は、各国の捜査当局がどれだけ個人情報の提出を求めたかを定期的に公開。どういう場合に情報を開示しているか、企業の判断根拠も明示している。国内では、裁判所の令状をとらずに捜査対象者の車にGPS(全地球測位システム)端末を設置して行動確認する「GPS捜査」について、最高裁が17年、プライバシー侵害にあたるとして、令状なしの実施は違法とする初判決を示した。
新潟大の鈴木正朝教授(情報法)は「多種多様な企業と提携して得たカード情報は購買履歴から位置情報まで多岐にわたる。個人情報保護法は法令に基づく情報の第三者提供を認めるが、中身を精査せず漠然と出すのは違法の可能性がある。運営会社は照会件数や提供内容を公表し説明責任を果たすべきだ」と指摘。捜査に対しては「企業のデータベースが捜査に便利なのは当然だがプライバシー侵害の可能性があり、本来は裁判所の令状が必要だろう。ただ、迅速な対応が求めれることもあり、事件の緊急度の有無など照会制度を適切に運用するための新たなルール形成が必要だ」と言う。(宮地ゆう、稲垣千駿)

 

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