2月10日 原発のない国へ「1」再生エネの岐路

東京新聞2019年2月3日1面:太陽光売り先選択 大手VS新電力 屋根発電秘めた力 余った電気を、どこに売ろうかー。東京都国分寺市の会社員高柳良大さん(53)は、今年11月に向けて悩んでいる。20年ほど前に家を建て、屋根に太陽光パネルを敷いた。発電した分を自宅で使い、余りを東京電力に売ってきた。価格は1㌔㍗時当たり48円。2009年に国が再生可能エネルギーの普及に向け、10年間固定の価格で買い取る制度(現行のFIT)で設定した。環境に優しく、しかもお得。だが、11月に「満期」の10年になり、FITでの高値の買い取りは終わる。その後は余った電気の売り先を自分で見つける必要がある。
経済産業省資源エネルギー庁によると、高柳さんと同じように年内でFITが終わる住宅用太陽光発電は全国で約52万軒。「小さな発電所」の総出力は200万㌔㍗と、標準的な原発2基分に相当する。売り始めた時期により順次満期を迎え、23年までの累計で165万軒。総出力は670万㌔㍗にも及ぶ。この状況を業界関係者は「太陽光発電の2019年問題」と呼ぶ。家の屋根で生まれる電気を巡り、大手電力と、自前で発電所を持たない新電力との争奪戦が静かに始まりつつある。
「業界最高値級の買い取り価格」。水戸市に本社を置く新電力「スマートテック」は、ホームページに宣伝文句を掲げる。昨年6月、どこよりも先駆けて、21年3月までにFITを終える人向けに「1㌔㍗時10円」と公表した。「薄利だが、ある程度の採算は見込める」と今泉嘉之経営企画室長。既に関東のほか、九州からも申し込みがある。九州電力が、太陽光発電を停止させる出力制御をしたせいかもしれない」 東電など大手は4~6月に価格を公表予定で、東京ガスなども名乗りを上げる。業界団体の太陽光発電協会(東京)の担当者は「各社まだ様子見の段階」とし、電力市場の動向から1㌔㍗時10年前後になるとみる。
買い取りを続けてきた大手電力は顧客情報を握っている分、新電力よりも優位。ただ、今泉室長は「価格は大手にもひけを取らないだろう」と強気だ。「再生エネの電気だからこそ買いたいという企業に供給して、利益を得たい」。そのためには住宅用太陽光の獲得が不可欠という。電気を売る側の動向が、新電力業界を左右する時代が来る。太陽光に取り組む個人ら約2500人が参加するNPO法人太陽光発電所ネットワーク(東京)の都筑建代表理事(78)は「FIT価格の高さで太陽光を始めた人もいると思うが、電気をつくりながら使う『プロシューマー(消費・生産者)』の意識が必要となってくる」と説く。冒頭の高柳さんは、地球温暖化への関心から太陽光発電を始めた。「再生エネを推進する新電力を応援したい。蓄電池を買い、昼にためた電気を夜に使うのも面白いかも」。屋根のパネルを見ながら笑った。(松尾博史)

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