2月1日 平成とは 金融危機「5」

朝日新聞2019年1月25日夕刊14面:救済案も「護送船団」で 外資系証券の関係者がこっそり話してくれた。「海外の銀行から(都銀の)Fもつぶれるのかとの問い合わせが押し寄せている」信用が低下した邦銀に海外勢が上乗せ金利を課すジャパン・プレミアが大きくなっていた。うわさをもとに取材に動くと、ますますうわさを広げることになりかねない。とはいえ、記者はそれをやらざるをえない。真実なのか風説なのか。トップらに一つずつ真偽をただす必要があった。
金融市場は荒れた。食品商社の東食が1997年末に「貸し渋り倒産」し、危機は銀行や証券から建設などの業種にも広がった。政府・与党が重い腰をあげ銀行への公的資金性を導入することにしたのは、これ以上危機を放置するのは危険だと考えたからだ。ひとつ難題があった。経営問題を抱えた銀行だけが申請すれば、世間に「うちは危ないですよ」と宣言するようなものだ。そこで浮上したのが大手銀行による横並び申請。健全な銀行も一緒に手を挙げ、傷んだ銀行を目立たなくする。さんざん批判されてきた護送船団行政の一種だが、他に妙案はなさそうだった。
東京三菱銀行に注目が集まった。バブル時代の慎重さが幸いして不良債権が少なく、業界で最も健全と見られていた。東京三菱はこの案を嫌がった。資本不足の心配もなかったし、公的資金に批判的な世論の受けが悪い。なにより経営責任やリストラを求められる恐れがあった。それでも、首脳の自宅を訪ねて聞くと「そうは言っても最後は金融界全体を考えて決める」。なぜか。「もし都銀上位行が破綻したら影響は計り知れない。膨大な数の取引先、巨額融資を肩代わりできる銀行など一つもない。うちだってできない」と言う。最終的に東京三菱は先陣を切って手を挙げた。そして98年3月、大手を中心に21行が一斉に公的資金を申請し、計1.8兆円が投入された。(編集委員・原真人)

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