2日 終末期、緩和ケア重視

朝日新聞2017年6月29日7面:積極治療から転換 学会で相次ぐ 終末期や老衰の患者への積極的な治療を控えることに言及した指針や提言を、亡くなる人が多い肺炎や心不全の専門学会が相次いで発表している。患者本人の意思や生活の質(QOL)を重視する考えの浸透や、高齢化が背景にある。ただ、助かる見込みがないかどうかの判断は高齢者では難しいことが多く、助かる人に必要な治療がされないことへの懸念も聞かれる。
日本呼吸器学会は4月に肺炎の新たな診療指針を発表した。老衰状態の患者などには、肺炎治療の基本となる抗菌薬(抗生物質)を積極的に使うよりも、苦しみを取る緩和医療を優先する選択肢を新たに加えた。
肺炎はがん、心不全を含む心疾患に次いで日本人の死因の第3位。基本的に抗菌薬で治るが、老衰やがんなどの病気が末期で、誤嚥性肺炎になりやすい状態の人は、腎障害などの副作用が高い頻度で現れたり、再発を繰り返したりする。
指針では、介護を必要とする高齢者などの場合、誤嚥性肺炎を繰り返すリスクや、持病が末期ではないかをまず判断し、該当すれば「個人の意思やQOLを考慮した治療・ケア」を選ぶことにした。指針の作成委員長の河野茂・長崎大副学長は「抗菌薬で治らない状態の人にも最大限に治療するのが従来の考えだが、かえって患者を苦しませる恐れがあった」と話す。日本心不全学会も昨秋まとめた提言で、75歳以上の慢性心不全を「がんと同様に死に至る悪性病態」と強調。終末期には入院して強心剤を使い続ける治療を見直し、患者の意思決定の支援や緩和ケアを中心とする指針を盛り込んだ。
生活の質 重視の流れ 緩和偏重 危ぶむ声も 後押しとなったのは、厚生労働省が2007年に作った終末期医療を決める際の原則を示した指針だ。適切な情報提供などをもとに、患者本人の決定を基本とした。その後、胃ろうなどの人工栄養や血液透析について、終末期の患者に使うかどうかを決める手続きが各学会から示された。
低流には「過剰な医療」への批判などとともに、高齢者医療を見詰め直す機運の高まりがある。日本人の平均寿命(15年)は男性80.75歳、女性86.99歳。高齢になると持病や障害が複数ある人が増え、薬への体の反応もかわるが、薬の効果などの根拠となるデータは80代以上の患者を対象にしたものが少ない。
日本在宅医学会の平原佐斗司・副代表理事は「高齢の人は様々な疾患が連鎖的に悪くなる。一つの病気だけ考えて治す医学は限界」。 「終末期」を理由に緩和ケアに偏ることを危ぶむ声も。心不全などの慢性疾患はがんと比べ病気の進行が見極めづらく、重篤になった際に治療で助かるか判断が難しい。「治療、緩和、リハビリのバランスをうまくとる柔軟性が必要」と平原さん。日本老年医学会理事長の楽木宏美・大阪大教授は「身体的、社会的な状況は人それぞれ。多様性をどう認めていくかが大切」と話す。(阿部彰芳、寺崎省子)

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