2日 池上彰の新聞ななめ読み

朝日新聞2017年6月30日15面:改憲めぐる首相発言 記事に透ける近さと熱 安倍晋三首相は6月24日、自民党としての憲法改正案を年内に提出したいという考えを明らかにしました。翌日の毎日新聞朝刊には、次のような記事が掲載されています。<安倍晋三首相(自民党総裁)は24日、神戸市で講演し、憲法改正について「臨時国会が終わる前に、衆参両院の憲法審査会に自民党案を提出したい」と述べ、秋から年内までを想定する臨時国会の会期中に、党改憲案を提出する方針を示した。首相が同党案の提出時期を明言したのは初めて>
「自民党総裁」という肩書がついています。首相ではなく自民党総裁としての発言だったからでしょう。この発言について、記事は、<学校法人「加計学園」問題や「共謀罪」法を巡る強引な国会運営を受け、安倍内閣の支持率は急落。7月2日投票の東京都議選で敗北すれば党内外の異論が勢いづく可能性もあり、議論が首相の思惑通りに進むかは不透明だ>と分析しています。
この講演は神戸市で行われたそうですが、どんな会合だったのか、記事には書かれていません。日経新聞も「神戸市内で講演し」とだけ書いています。では、読売はどうか。毎日も1面に掲載していますが、扱いは大きくありません。ところが読売は1面トップの大きな扱いです。
<安倍首相(自民党総裁)は24日、神戸市内のホテルで講演し、憲法改正について「来るべき臨時国会が終わる前に、衆参の憲法審査会に、自民党の案を提出したい」と述べた。臨時国会は今秋の開会が想定されており、改正案を年内に国会提出する考えを表明したものだ>
首相から「読売新聞を熟読してください」と言われるだけあって、首相の発言を詳細に報じ、別の面に「講演の要旨」もまとめられています。
この記事も「神戸市内のホテルで講演し」となっているだけですが、2面には講演の様子がカラー写真で掲載されています。背景に「産経新聞社」という文字が見えます。産経新聞主催の講演会なのでしょうか。なまじ文字が見えているだけに知りたくなります。読者に不親切です。
ところが、朝日新聞を読むと、どのような講演会だったのか、はっきりします。<産経新聞の主張に賛同する任意団体「神戸『正論』懇話会」主催の講演会で語った>と明記しているからです。
24日は東京都議会議員選挙の告示の翌日ということは前からわかっていたでしょうが、自民党の候補者の応援ではなく、こちらの講演会出席を優先したのです。安倍首相がいかに産経新聞を大事に思っているかがわかります。首相の会見をめぐる発言が、どこでなされたかも大事な情報。読売などは他の新聞社が関係しているので主催者名を伏せたのでしょうか。
では、産経新聞をみましょう。1面トップの大きな扱いです。<安倍晋三首相(自民党総裁)は24日、神戸市の神戸ポートピアホテルで開かれた神戸「正論」懇話会の設立記念特別講演会で、憲法改正について「来るべき(秋の)臨時国会が終わる前に衆参の憲法審査会に自民党の(改憲)案を提出したい」と述べ、来年の通常国会で衆参両院で3分の2超の賛同を得て憲法改正の発議を目指す意向を表明した>
「通常国会で衆参両院で」と、「で」の連続とは、プロの新聞記者が書いたとは思えない文章ですが、記事の中でこう書きます。
<首相がここまで強い決意を示したのは、加計学園問題や若手議員の不祥事などで、内閣支持率が急落する中、憲法改正という自民党の党是を掲げることで、保守勢力の奮起を促し、結集を呼びかけたいとの思いがある> なるほど。安倍首相の思いを代弁してくれています。毎日新聞の分析が冷静だったのに対し、こちらはずいぶんと熱が込められています。自社の関連行事に首相が足を運んでくれた。そんな感謝の気持ちもにじんでいるように思えます。
◇東京本社発行の最終版を基にしています。

 

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