12月5日 平成とは 原発が爆発した「6」

朝日新聞2018年11月29日夕刊14面:福島志願に「馬鹿者!」 東京本社から名古屋に転勤になった。3月30日夕、JR品川駅を発つ。新幹線の中で、「ほんとうに行くべきなのは北ではないのか」と真面目に考えていた。照明がすべて灯る名古屋駅はまぶしかった。節電の首都にいた私には、それだけで平穏に思えた。
不動産屋を訪ね、新たに暮らすマンションの鍵を受け取った。女性社員から「放射能の避難者が名古屋にも多い」と聞いた。調べると、当時、福島県からは3万人超が全国に避難していた。名古屋でも原発と縁が切れたわけではない。中部電力も静岡県に浜岡原発を持つ。大津波に備えた防潮堤の建設が議論されていた。
4月14日のことだ。「東北被災地の記者を増員する」。打ち合わせの席で、部長が会社の方針を説明した。終了後、自分の席に戻ると、部長がわざわざやって来た。「今晩空いていたら、飲みに行かないか」「覚悟」を決めた。他人に言われてやらされる仕事など気が進まない。自分から言い出そう。会社の近くの焼き鳥屋。関に座るなり、切り出した。「分かっています。福島総局か原発に近い支局にお願いします」
驚いた部長の顔は今も忘れない。転勤してきた私と飲みたかっただけ、だったらしい。名古屋に単身赴任して2週間。自分の早合点がきっかけになり、「福島転勤」が動き出した。その夜のうちに、家族に電話で説明した。栃木に住む母にも。すると、涙声で怒鳴られた。「なぜわざわざ被爆しに行くんだ。志願して行くなんて、そんな馬鹿者に育てた覚えはない」。四十を超えて、親に本気で叱られるとは思ってもいなかった。
これから子作りするとも思っていない。被爆で体を壊すほどのことはなかろう。「戦争に行くんじゃないんだから」。どう説明しても聞き入れてもらえなかったが、私の意思も固かった。(編集委員・大月規義)

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