12月31日 見張り塔から ジャーナリスト・津田大介さん

東京新聞2017年12月26日4面:ソーシャルメディアの影響力拡大 負の側面 具体的対策を 今年はかつてないほどにネットと政治、実現社会との距離が近づいた年だった。まず注目すべきは、かねて言われてきたツイッターやフェイスブックを通じた「世論工作」が、実際にかなりの規模で行われていることが明らかになったことだ。ロシアゲート疑惑を巡っては11月に米議会で公聴会が開かれ、フェイスブック、グーグル、ツイッターという3社の法務担当役員がそれぞれ広告や自動プラグラムなどを通じてロシアが世論工作活動を行っていることを認めた。
日本でも秋以降、格安で他人に記事執筆を依頼できるクラウドソーシングサービスを通じて世論工作が行われている疑惑が持ち上がった。11月にはNHKの「クローズアップ現代+」で匿名掲示板やツイッターの情報を作為的に編集する大手「まとめサイト」の収入が月700万円にも及ぶことが明かされた。世論工作と広告収入目当てでネット発の情報が歪められている実態が明らかになりつつある。
ソーシャルメディア上に流れる情報は人の思考にどのような影響を与えるか分析した研究者の論文も目立った。2月には米カリフォルニア大学ロサンゼルス校が「保守的な傾向を持つ人は、リベラルな人に比べて危機を煽るウソニュースを信じやすい」という研究結果を発表。4月には伊IMTルッカ高等研究所のW・クアトロチェッキ氏らが日本におけるまとめサイトのような「陰謀論サイト」の読者がその虚偽を暴く情報に接すると、逆にその陰謀論サイトを読み続ける確率が3割高まるという調査結果を発表した。
9月には、イエール大学のD・ランド氏らが、米フェイスブックで今年から始まったニュースのファクトチェック機能によるフェイクニュース排除効果はわずか数%にとどまり、トランプ米大統領支持層や若者層では、むしろフェイクニュースを正しいと思う割合が増加しているという調査結果を発表。これらの調査結果は、ネット上の陰謀論やデマに対して「事実」を突きつけることで解決することはないという単純な事実を示している。情報がフィルタリングされることで対象への信仰を強め、否定的な意見を述べる「敵」を攻撃するーいまのソーシャルメディアは、そのような場所になりつつある。
他方で、ネット世論の影響力の拡大を告発に生かす事例も出てきた。10月以降急速に盛り上がった米映画業界のセクハラ告発に端を発する「#MeToo」ムーブメントはその象徴だろう。米国から世界中に広がり、じわじわと日本にも広がりを見せている。埋もれがちな社会問題を「炎上」させることで公知のものにできるソーシャルメディアの力は、デマやヘイトスピーチの拡大にも一役買っている。両者は表裏一体の現象なのだ。
そのことを考えるうえで11月16日に「まとめサイト」の大手「保守速報」の管理人に200万円の支払いを命じた大阪地裁の判決は注目に値する。ソーシャルメディアの持つ負の側面がさまざまな見地から明らかになったいまだからこそ、2018年は具体的な対策を進める年にしなければならない。

 

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