12月21日 わたしの紙面批評 作家 中島京子さん

朝日新聞2017年12月16日16面:質問時間の配分問題 異常な国会審議 今後も監視が必要 特別国会が9日に閉会した。いくつもの「異例」なやりとりが森友学園側と財務省の間に存在したことがあきらかにされ、疑惑はさらに深まったが、安倍昭恵さんや、佐川宜寿・前理財局長が証人喚問だれることもなかった。野党が追及しきれなかった背景に、「与野党質問時間配分」問題があった。「2対8」だ、いや「5対5」だ、そもそも議席配分からすれば「7対3」だと、いろいろな数字が並んだ。多くの紙面が割かれ、重要性は伝わったが、基礎的理解を深めるための大特集が組まれたらよかった。
この問題は、国会の存在意義と密接なものであり、民主主義の根幹にかかわる。「選挙で大勝したから質問時間をたくさんほしい」と主張する与党議員が、どれだけ民主主義や三権分立を理解しているかも疑わしい。10月3日の「時時刻刻」の「野党、質問削減を避難」は、「与党2対野党8」が慣例となった歴史的背景や、「政府とそれを支える与党は国会審議で『一体性』が高い」というそもそもの仕組みを解説していて、その後の展開を追うために役だった。基礎的な知識を得る記事としては、11月15日の「いちからわかる! 国会質問 何のためにするのじゃ?」があったのだが、フクロウの「ホー先生」が質問するこれは、紙面が足りなすぎた。記事では、「質問時間配分」に関す与野党の攻防を、具体的な国会論戦の前哨戦的に取り上げたものが多く、基礎的説明はその中で補足的になされていたが、一度整理してほしかった。
そんな中で、もっと読みたかったのは、11月3日の「議会の質問時間配分欧州でも野党に多く」という記事だ。民主主義が根づいている欧州では、「議会の役割を『政府のチェック』とみなしてる」という当然のことに触れ、議会の7割を与党が占めていたドイツで、野党の質問件数が占める割合が「大質問98.4%▽質問時間80.7%」、フランスでも法案の審議時間の「最低60%」が野党の質問に割かれるなど、具体的な数字が挙がっていて参考になった。学習院大学の野中尚人教授(比較政治)が指摘されるように、他国では首相が委員会に出席しないケースなどあり、一概に比較はできない。しかし、「議会は政府を監視するものだ」と広く理解することが、この問題を考える上で最重要だと感じた。
「質問時間配分」問題で、最も参考になったのは、与党の質問時間が増えた結果なにが起こったか、であった。「加計問題」をめぐる衆院文部科学委員会の質問に、義家弘介・前文科副大臣が立った。11月16日の「時時刻刻」では「国会からチェックを受ける立場である省庁の最高幹部が『チェック役』に転じた形」と指摘し、野党議員の声として「答弁者が質問をしているようなもので、たちの悪い一人芝居だ」という批判を掲載している。
与党の「質問」のとんでもなさをきちんと書いたのは、「安倍尊大人様閣下」と「呼びかけをする議員すら出かねない」と指摘した12月1日の天声人語だった。「政府の施策の問題点をわきに置いて、首相をほめていては国会審議とは言えまい。推す法案を長々と説明して『総理、応援していると言っていただけますか』『応援しております』というやり取りもあった。茶番である」。茶番質問は自民党の山本一太議員。
立法府のチェックを受けるべき行政府の前幹部が立法府で「質問」と称して自己を正当化する発言をし、与党議員が自党の総裁をヨイショする。これではそもそも「国会質問」とは言えない。このたびの特別国会は、首相の外交日程の影響で前半はまともな審議がなかった。党首討論もなし。そして、ヨイショと自己弁護のカッコつき「質問」。この異常なまでの国会軽視が、今後の「慣例」とならないよう、メディアはしっかりと監視してほしい。(記事は東京本社発行の最終版)

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