12月14日 負動産時代 迫られる対応【4】

朝日新聞2017年12月8日7面:固定資産税「高すぎる」 栃木県那須塩原市の塩原温泉。温泉街から少し離れた場所にある旅館「湯守田中屋」は長年、固定資産税の負担に苦しんできた。創業54年。2015年の宿泊客数は約1万3千人で、バブル期のピークからほぼ半減した。市に納めた15年度の固定資産税額は259万円。建物分が大半を占める。部屋の間取りを改修したいが、税金が経営を圧迫し、設備投資にお金を回せない状況だ。
旅館の訴えは 田中三郎社長(58)は、建物の固定資産税が高すぎるとして同年、市に引き下げを求める訴訟に踏み切った。訴えの根拠にしたのが、総務省が定めた固定資産税の「評価基準」だ。建物の固定資産税額は、どんな資材で建てられたかをベースに、「経年劣化」や「資材価格や労働費の変動」などを加味して算定される仕組みで、建物の「市場価値」は直接反映されない。ただ、評価基準には「家屋の状況に応じ必要があるものは、需給事情による減点を行う」との規定もある。地域の観光客が減り、需要も落ち込んだのだから、規定に従って評価額を下げるべきだ、というのが田中社長の主張だ。同様の訴えを起こし、ゴルフ場のクラブハウスや商業施設で評価額が下がった事例もある。
宇都宮地裁の一審判決では田中社長の主張が一部認められた。地域の宿泊客数が31%減り、基準地価も約46%下落したことから、「家屋の市場性の減退」が資産評価額を15%引き下げるのが適正だとした。だが今年11月の東京高裁の控訴審判決では一転、田中社長の請求は退けられた。地域には倒産しても経営者が代わって続けている旅館が複数あり、「直ちに家屋の価値が減少すると認めるのは困難」とされた。田中社長は「納得できない」として最高裁に上告。司法の最高判断を待っている。那須塩原市の担当者は、「一審判決のままでは税収減のみならず、全国の観光地に波及する恐れがあった」と、控訴審判決を評価する。
安定する税収 シリーズ「負動産時代」の取材班には、「土地や建物の資産価値が下がったのに、固定資産税が高すぎる」という読者からの声が多数寄せられた。空き家になった実家の固定資産税が重荷になっているという神奈川県の60代男性からは「税金を滞納して差し押さえてもらった方が得策ではないかと考えます」との訴えが届いた。
総務省によると、15年度に「建物の需要に応じた減額」を適用した市町村は55(全体の3.2%)にとどまる。実際に減額するかの判断は自治体の意向が働きやすいとみられる。ニッセイ基礎研究土地・住宅政策室長の篠原二三氏は「家屋の評価はブラックボックス。市場性を加味するなど大幅な改善が必要だ」と話す。政府は、所有者不明地の対策や、土地の所有権放棄ルールの検討については打ち出したものの、固定資産税評価の仕組みを大きく見直そうとの動きは今のところみられない。建物にかかる固定資産税収はこの20年間、3兆円台後半で安定している。ほぼ同規模の土地分と合わせ、固定資産税収は市町村税収全体の4割を超える「虎の子」の財源だ。固定資産税に詳しい税理士で不動産鑑定士の森田義男氏は「市町村の財源を維持しなければならないので、国も身動きがとれない。税収が減るような抜本的な改革は期待できない」と指摘する。(大津智義)

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