12月1日 池上彰の新聞ななめ読み

朝日新聞2017年11月25日15面:地球上に「チバニアン」足りない具体性 不親切 大きなニュースになったけど、科学に弱い読者にはピンと来ない。そこは新聞の出番です。最近話題になったのが「チバニアン」。ラテン語で「千葉時代」という意味だそうです。どういうことなのか。11月14日付朝刊の朝日新聞1面には、次の記事が出ています。<約77万~12万6千年前の時代が「チバニアン(千葉時代)」と呼ばれる可能性が出てきた。千葉県市原市の地層が、地質年代の境界を代表する「国際標準模式地」の後方に残ったためだ。地球の磁極が逆転した痕跡が確認できる点が「国際地質科学連合」の下部組織で評価され、競合するイタリアの地層を1次審査で13日までに破った結果、唯一の候補となった>
この文章が、一般の読者にどこまで理解できるのでしょうか。この地層が、なぜ選ばれたのか。<地球は過去にN極とS極が何度も入れ替わっており、最後の逆転が77万年前だったとされる。同地層では堆積物から、この逆転現象を精度よく見ることができる> ますますわからない。「地球はN極とS極が何度も入れ替わっており」というのは、専門家にとっては常識ですが、一般読者には驚天動地の新知識でしょう。ここでいう「N極とS極」が何を意味するか分からない人もいるはずです。地球が大きな磁石であることを、この段階で書き込むべきでしょう。
これに関しては、同日付の38面に解説があります。そこでようやく磁石のことが出てきます。<地球は大きな磁石だ。過去に何百回もN極とS極が入れ替わっており、最後の逆転が起きた時期の特定が課題だった。磁力をもつ鉱物が含まれる岩石を調べれば、その時代のN極とS極の向きがわかる>
最後の逆転が起きた時期がわかったかといって、なぜこの地層に特別の名前がつくのか、この記事だけではわかりません。同日付の毎日新聞の記事を読んでみましょう。<地球の磁場を示すN極とS極は過去360万年の間に計11回、逆転したと考えられ、この地層はその最後の逆転を示す証拠とされる。磁場の逆転は、地球中心の核が影響しているとみられるが、原因は解明されていない。中期更新世は最後の逆転を「境界」することが決まっており> なるほど、「最後の逆転」の時期が特定できれば、そこが境界となり、新しい名前がつけられることになっていたのですね。でも、なぜ磁場の逆転が起きているのか。「原因は解明されていない」と書いてあれば、ああ、わかっていないのだと納得できます。朝日の記事には、それすらもないのです。
次に同日付の読売新聞の記事を見ましょう。<地質時代は、地球のN極とS極が入れ替わる地磁気の反転や生物の大量絶滅などを境に、115に区分される。同連合(国際地質科学連合のこと)が各時代の代表的な地層1か所を「国際標準模式地」に選び、時代名を決める。今回の時代は最適な地層が決まっておらず、名前がなかった> だからチバニアンという名称になりそうなのですね。<国立極地研究所など日本のチームは、市原市の地層に、この時代の特徴を示す地磁気反転の痕跡を発見。環境がわかる花粉や生みの微生物化石などのデータもそろえ、今年6月、この地層を国際標準模式地とするよう同連合に申請、「チバニアン」の命名案を発表した>
朝日の記事で「堆積物から、おの逆転現象を精度よく見ることができる」とあるのは、花粉や海の微生物化石のことだったようです。ここまで具体的に書いてほしいですね。このニュース、もっと詳しい解説が読みたくなります。読売は16日付朝刊で、地球が磁石であるわけを含め、詳しい解説記事を掲載しました。朝日は22日付朝刊でようやく解説がでましたが、あまりに遅すぎます。読者に不親切です。
◇東京本社発行の最終版を基にしています。

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