11月9日 平成とは テロのアメリカ「4」

朝日新聞2018年11月5日夕刊10面:星条旗はためく下に 同時多発テロ事件の翌日、2019年9月12日の朝。ワシントンのオフィスで徹夜明けの私は、机を離れ、ある変化に気づいた。朝日新聞アメリカ総局には、日本からの特派員が6人、現地採用の庶務担当が1人、6人の米国人取材助手がいた。フロアに並ぶ助手5人全員のデスクに、小さな星条旗が飾られていた。テロは、米国そのものへの攻撃とみなされた。旗は団結心の表れであった。ひとりの助手が、その日の朝のできごとを話してくれた。政府関係の職場で多くで自宅待機が命じられたのだが、それでも通勤する人に何人も会った。理由を聞くと、「私たちの生活がテロに屈しないことを示したいからだ」と答えたのだという。「ナイン・イレブン」は、米社会を根底から変えたのだ。
テロ当時の大統領は、共和党のブッシュ氏(息子)だった。前年の大統領選では、民主党のゴア候補と大接戦を演じて、開票作業が混乱、法廷闘争になった。最高裁の決定でブッシュ当選が決まったという経緯があり、国民の半分は「正統性」を疑問視していた。だが、聞きに団結するのは米国の伝統である。ブッシュ大統領の支持率は一気に90%に達した。米メディアはリベラル色が強い。そこで働く若者の大半は民主党支持だ。朝日の助手も日頃は演説下手の大統領の良い間違いを馬鹿にしていたのに、大統領の演説に拍手を送る。言い間違えると「しっかりしろ」と檄を飛ばす。テロ後の米国は、星条旗で埋め尽くされ、愛国心一色のように見えた。日本のメディアにはそんな書きぶりが目立った。しかし、米社会を支える原理は個人主義であり、批判を恐れない人々があちこちにいるのが米国の強さのはずだ。政治記者にとってワシントンは主戦場だが、なるべく首都を離れて広く社会を観察しようと思った。

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