11月7日「事故物件」告知いつまで

東京新聞2017年11月2日28面:ガイドラインなく、相次ぐトラブル 「座間の事件なら最低10年」 神奈川県座間市で9人の遺体が見つかった事件。現場は賃貸のワンルームが並ぶアパートだった。殺人のほか、自殺や孤独死などがあった不動産は「事故物件」と呼ばれ、売買や貸し借りの契約を結ぶ際、何があったかを示さなくってはいけない。だが、どれぐらいさかのぼり、過去の事件を告知すべきかについてはあやふやだ。
小田急小田原線の相武台前駅から、徒歩10分弱の地点に今回の事件の現場がある。木造2階建てで築30年ほど。不動産情報サイトをみると、家賃は月1万9千円から2万2千円だ。ネット上で、事故物件情報をまとめているサイト「大島てる」を開くと、地図上の現場の位置に炎のマークが付いていた。事故物件があることを示す印だ。
サイト運営者の大島てるさん(39)は「サイトを開いたのは12年前。当時は不動産を購入して建物を建て、テナントを貸す仕事をしていた」と語る。当時、契約問題なら弁護士、建物の不具合なら設計士に相談した。だが、事故物件は「心理的な問題とされ、専門家はいなかった」。そこで自分で情報を集めようとサイトを開いた。
掲載物件は増え続け、現在は約4万件。大島さんのサイトが重宝される背景には、不動産取引の際、必ずしも十分な告知がされていないという現実がある。実際、告知トラブルをめぐり、多くの訴訟が起こされている。一般財団法人「不動産適正取引推進機構」のまとめでは、平成に入ってからだけで40件以上の判決がある。最近では2016年に神戸地裁が「7年前の強盗殺人事件を告知しなかった」と、売り主に賠償の支払いを命じている。
トラブルの原因の一つは、告知すべき内容が個々の不動産業者の判断に委ねられていることにある。宅地建物取引業法47条は、取引に影響を与える重要事項を相手方に告げるよう、不動産業者に義務付けている。殺人や自殺などがあったことも含まれる。とはいえ、何年前の事件までさかのぼるべきかについては規定されていない。
不動産取引を所管する国土交通省の担当者は「『事故』の程度はさまざま。告知するか否かは個別に業者が判断するしかない。(基準となる)公的なガイドラインはなく、作れないと考えている」と説明する。
ちなみに、よく言われる「事故があっても一人、借家人を挟めば、告知しなくてもよくなる」というのは07年8月の東京地裁判決で示された判断。これについても、担当者は「あくまでも、個別のケースについての判決だ」と語る。もう一つの原因は、事故情報を業者も知らない場合があること。大島さんは「所有者は高く売ったり、貸したりしたいから、情報を出すことに消極的。業者も情報のプロではない。知らないこともトラブルを生みがちだ」とみている。では、今回の現場ならどの程度の告知が必要か。
神奈川県の不動産を扱う男性は「建て替えた上で、この敷地に住む全員はもちろん、隣接地に住もうとする人にも告知する必要がある。ただ、現実的には借り主を募集することすら難しい。売却なら実勢価格の1割か2割。それでも買い手が付かないかも」と語る。
不動産取引に詳しいみずほ中央法律事務所の三平聡史代表弁護士も「これまで裁判になった例をはるかに超えている」とうなる。三平弁護士によると、事件が大きく報道されるほど告知の必要な期間が延びる傾向があるという。「この事件なら、最低10年は告知する必要がある。たとえ建て替えても、告知の必要性は変わらない」

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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