11月7日 ザ・コラム 秋山訓子(編集委員)

朝日新聞2107年11月2日16面:「フェス」に似たもの 政治は日常の地続きに 混乱と狂騒のうちに、嵐のような総選挙が終わった。私はあちこちの選挙区に行ってみた。最後に向かったのは投票日前日、安倍晋三首相の秋葉原駅前での演説だ。到着すると、業界団体の幹部が前説をしていた。よくある選挙の光景といえよう。
その直前には、立憲民主党の集会に行った。枝野幸男氏の到着を待つ間、司会の女性が呼びかけた。「スマホの落し物がありました。誰か心あたりのある人はいませんか?」「これも何かのご縁だから、まわりの人と自己紹介して友達になったりして」。なんかずいぶんカジュアルで日常っぽい、いつもの選挙の集会じゃありえない・・と思ったところで私は気がついた。
政治とは本来、日常と地続きのはずだ。それが途切れてしまっていたのだ。ここにいる人たちは、これまで政治に、選挙に興味があっても、どうしたらいいのかわからなかった。ようやく参加できると集まり、政治とつながる実感を得たのでは、と。枝野氏は演説した。「政治が国民からいかに離れてしまっていたか。それにいかに国民がいらだっていたか、私は反省しています」「政治を国民の手に戻します」
私は山尾志桜里氏の選挙区にも行った。スキャンダル報道で女性票に打撃、と報じられていたが、私が見た光景は違った。補遺実の昼間ならまだしも、朝の駅頭でも女性が彼女に歩み寄り、握手に応える。私は聞いた。なぜ彼女を支持するんですか? 「ほかにいないじゃないですか、同世代で、女性で」「待機児童のことと国会で聞いてくれる」。私はこうも聞いた。スキャンダルは気にならない? 「政治とプライベートは関係ない」「最初は正直腹がたったけど、ああやって堂々と出てきて、逃げない。印象が変わりました」
私は思った。女性たちはこれまで政治とどうつながったらいいかわからなかったのだ。でも、実は政治を欲していて、ようやく回路を見つけたのだ。立憲を支持した人たちとある意味共通している。
そんな時、私は1人の女子学生と知り合った。古賀要花(いるか)さん、20歳。東京の大学1年生だが、今年3月、故郷の岡山市で「エレフェス 学ぼう!18歳選挙権」と題するイベントを行った。「もともと教育に関心があって。若者が自分で考えて主体的に行動するといいなって思ってて、18歳選挙権はきっかけになると考えたんです」。ショッピングモールの一角を借り、注目を集めるため「パフォーマンス代表選」をした。「政治に興味ない人にこそ来てほしかったから。ふだん行くモールで自分と同世代がお祭りみたいに楽しくやっていれば、立ち寄って学べるんじゃないかと」
選挙のクイズをし、いつの選挙でどんな思いで誰に投票したか記録できる「選挙手帳」(母子手帳や、お薬手帳のイメージだ)をつくり、配った。費用は寄付でまかなった。2千人が集まり、大盛況だった。9月には小学生向けに第2弾を行った。今回が2回目の投票。住民票を移していないため、「手続きがもう、本当に大変だったんですけど、根性で投票しました」。
自民党を応援する人々が選挙に深くかかわるのは、「その結果が日々の暮らしに直結している」(陣営)からだ。ある地方の選挙区の自民党の候補者は、後援会の人々が総出で選挙を支えていた。運転手をしていた地元企業の幹部は「民主党政権の時は全然ダメだったけど、今期は事業をつけてくれた本当に助かりましたよ」
政治が生活に直結するのは彼らだけではない。ただ、多くの人はどうやって関わればいいかわからなかったのだ。立憲はそのに一つの答えの芽を見だしたように思える。そして、人々が選挙戦に立ち入っていく理由はもう一つ、それが面白く、楽しいからではないか。誤解を恐れずにいえば「フェス」に似たようなものだからでは、と私は思った。立憲を支持した人たちは、政治に参加する作法を学びつつあったのだ。
「あなたと一緒に(政治をする)」と枝野氏は語りかけていた。いざ具体化となれば本当に難しいだろう。政治は現実だし、永田町の権力闘争とは無縁でいられない。国会が始まった。次の幕が開いたのだ。

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