11月7日 黑、黒の白「下」

朝日新聞2018年11月2日9面:脱「暗黒」社員の発案続々と 帰宅は毎日終電、週末も出勤という広告会社で取締役をしていた岩崎裕美子さん(50)。「残業をやまて売り上げが落ちたらどうするんだ」という社長の一言に愛想を尽かして退職し、2005年に化粧品会社ランクアップを設立した。こんどは子育て中の人も活躍できる会社にしたいと、残業を極力しない働き方に心を砕いた。でも、広報部の近藤良美さんは、5年ほど前までの会社の雰囲気を「あれは暗黒時代でした」と振り返る。とにかく、社長の岩崎さんが一から十まで決めたがる会社だった。社員が作成した会員向け冊子は、細かく変更を求めた。文章から文字の色、フォント、「!」マークの数まで。会員向けに企画したイベントを岩崎さんが土壇場でひっくり返すこともあった。
社員たちは休憩室で顔を合わせては、愚痴をこぼしあった。それを岩崎さんも感じていた。「休憩室の存在が恐怖だった。みんながあそこで私の批判をしているだろうなって」12年、社員に行った満足度調査の結果を見て、岩崎さんは言葉を失った。「意思決定に従業員をさせている」と答えた社員は11%。「仕事に行くことを楽しみにしている」は0%だった。一致団結するには運動会だ、と言い出してみたが、社員の反応は冷たかった。
そんなとき、2泊3日の社員合宿があった。岩崎さんが不在のなか、最終日の話し合いのテーマは「会社のために自分たちができること」。ついに社員立ちの不満が爆発した。「この会社で働く目的がわからない」「認められていないから貢献なんてできない」合宿に参加していた講師は、会社にいた岩崎さんを呼んだ。そこで、あらためて社員たちの気持ちを思いを知らされた。ほどほどの給料と休みやすい職場があれば、社員は幸せだと思っていた。社員の給料を自分が稼がなくちゃという思いが強すぎた。残業もないが、やりがいもない。そんな会社になっていた。経営者失格だ。変わるべきは私だったー。
改めて理念を練り直した。こんどは「挑戦」という言葉に絞った。「選ばれ続ける企業であるために、挑戦しつづける会社でありたい」 また突然な話だ、と社員たちがざわついた。めげずに朝礼や研修で繰り返し考えを伝えた。主力商品のメイク落としが大ヒットし、業績は右肩上がりだったが、現状維持では良しとしない何かを、社員の側から引き出したかった。しだいに新商品の企画が出てくるようになった。口を挟むのを、ぐっとこらえた。子育て生活のなかで感じる課題を解決するような商品の提案も出てきた。社員が練った顧客向けイベントの企画には「とにかくやってみたら」と言い、あえて細かく尋ねないようにした。「一人一人が自身を持てるようになった」と近藤さんは言う。
この夏、オフィスを訪ねると、夏休み中の子どもたちが、働く母たちの横で宿題をしたり本を読んだり。夫が単身赴任中の西岡愛さんは海外事業部長。出張時は保育園に通う2人の子どもを岩崎さんに預ける。「最初は恐縮しましたけど、すごく助かります」9月中旬、「暗黒時代」を知る社員の発案で運動会が開かれ、綱引きや借り物競争で盛りあがった。一番楽しそうにしていたのは、直前まで何人参加するか気にしていた岩崎さんだった。「社員が発案してくれたのが何よりうれしかった。社長の命令で徒競走を走るなんて、単なるパワハラだもんね」そう笑う目は、赤かった。社員51人の9割以上が女性で、半分は子育て中。残業はほとんどしない。そんな会社が12年連続増収の好業績を突っ走っている。(高橋末菜)

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