11月30日てんでんこ 皇室と震災【15】

朝日新聞2017年11月25日3面:「うちに遊びにきてね」。少女と交わした約束を、皇后さまは果たした。 思いもかけない来訪だった。2001年8月28日の朝。伊豆諸島・三宅島で前年の7月から続いた噴火のため、静岡県下田市に避難していた池田裕次さん(54)一家のアパートを、皇后さまがお忍びで訪れた。「実央ちゃんはいらっしゃる? 会いに来たわ」 前日の27日、天皇、皇后両陛下は静養で下田市の須崎御用邸に入り、夕方に市内で三宅島から避難した人たちを慰問した。三宅島と下田市は漁業で長い交流があり、漁船ごと被災者を受け入れていた。小学2年生だった池田さんの長女、実央さん(23)は恥ずかしそうにしながら、皇后さま「おばあちゃん、うちに遊びに来てね」と伝えたという。約束を果たすサプライズ訪問だった。
実央さんは寝ており、母の弘子さん(50)がおぶって皇后さまと対面した。「皇后さまは『起こすつもりはなかったのよ』と優しく声をかけてくださって。励みとなりました」後日、実央さんはお礼の手紙を出した。「あいにきてくれてありがとうございます」と。三宅島に来て欲しいとも書いた。その願いも、06年にかなえられることになる。
被災した三宅島と皇室の関わりは00年9月にさかのぼる。全島避難が終了した9月4日、両陛下は東京都立秋川高校(現在は廃校。あきる野市)に避難している約350人の小中高生に栃木・御料牧場産の牛乳を贈った。01年7月にも、同行の建物で避難生活を続ける生徒らに再び牛乳を贈った。同月26日には新島、神津島を訪れたほか、三宅島の状況をヘリコプターで上空から見た。
02年3月には東京都が八王子市に開設した「げんき農場」を訪問。三宅島特産のアシタバや赤芽イモなどの種や苗を絶やさないように島民らが育てていた場所で、両陛下は「早く帰れるといいですね」と激励した。03年4月には、東京都江東区にあった三宅村「ゆめ農園」を訪れた。森林組合事務長(当時)の守屋広次さん(70)は「皇后さまは傘をささず、雨にぬれながら激励してくださった」と振り返る。
天皇陛下が関心を示したのが、溶岩に穴を開けて観葉植物や花を植え込んだ「溶岩鉢」だ。噴火に負けず、新たな地場産業にしようとの思いから生まれたものだ。後日、溶岩鉢が二つ、御所に届けられた。(島康彦)

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