11月3日 地方税滞納 過酷取り立て

東京新聞2017年10月30日22面:給与口座残高0円に 宮城県地方税滞納者整理機構が、国民健康保険税などを滞納した女性の銀行口座から約9万円の預金全額を差し押さえた措置に「違法微収では」との疑念が広がっている。滞納者が生活できなくる差し押さえは法律で禁じられているからだ。近年、地方税をめぐる過剰な取り立ては全国で起きており、「違法」判決も出ている。地方税の現場で何が起こっているのか。
宮城県大崎市の女性(63)は先月15日、コンビニのATMで現金が下せなかった。パートの給与が振り込まれたはずなのに「残高が足りません」。銀行で通帳記入をすると、目を疑う文字が躍っていた。預金はすべて引き出され、残高は「0」。その隣には「差押え」と記されていた。「頭が真っ白になった。何かの間違いじゃないかって」と振り返る女性は、絞り出すようにつぶやいく。「生活費も全部差し押さえるなんて死ねと言うようなもの。こんなやり方ないっちゃ」
30代で離婚し、一人で4人の子どもを育ててきた。子ども3人は独立して家を出ており、現在は、引きこもりの長男と二人暮らし。月8万~12万円の女性のパート収入で食いつないでいる。10年ほど前までは歯を食いしばって納税してきたが、無理がきかなくなり、市民税や県民税、国保税などの滞納が重なっていた。
女性のもとに支払いの催告書が送られてきたのは今年5月。送付主は宮城県地方税滞納整理機構だ。税滞納への対策強化を目的に06年ごろから全国に設置された組織で、宮城県では09年につくられた。現在、県と二十二市町村が参加し、滞納の取り立て実務にあたっている。
女性は、機構の担当者から08年以降の滞納額が延滞税を加えて計約197万円に上がっていると告げられた。「とてもそんなお金は払えない。分割納付をお願いしたが『分割なんてやっていない』と断られた」 やむなく女性は、年金暮らしの90代の母親に頭を下げた。母親は年金を担保に100万円を借りてくれたが「二度と顔を見たくない」となじられた。6月、その100万円をすべて返納に回した。
元金は残り約39万円になり、女性は何度も分割納付を申し入れたが、機構側は応じない。女性の預金が全額差し押さえられたのは、その交渉が続く最中のことだった。「確かに、滞納をした自分が悪い。悪人が何を言うのか、と思われるかもしれない。でも、なんでこんなに追い詰めるの。滞納した人には何をしてもいいの?」と言葉を詰まらせる。
月収をすべて失った女性はもう一度母親に頭を下げた、生活費を借りたが「お金のことでは一切来るな」と絶縁された。ほかに頼れるあてはなく、今後の生活のめどは立たない。「不安で毎日、寝られない。機構が勤務先に口座を照会して事情が知られ、働きづらくなった。長男との心中も考えた。でも、機構側は『全額返してくれればこんなことはしない、来月も同じように対応しまう』と言うんです」
「こちら特報部」は、機構事務局の県地方税微収対策室を取材した。前原良二室長は「個別の案件には、事実関係を含めて答えは差し控える。一般論として、私たちは法律の趣旨にのっとって適切な対応をしている」と繰り返すのみだった。しかし、現に女性は差し押さえで生活に困窮している。本当に「残高0円」で生きていけると考えたのかを問うと、耳を疑う言葉が返ってきた。「生活実態を把握してからでないと差し押さえができないわけではない」

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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