11月3日 各地で強権的微収 違法判決も

東京新聞2017年10月30日23面:支給日の年金・児童手当差し押さえ 女性は、機構に参加する県と大崎氏を訴える準備を進めている。女性の相談を受ける佐藤靖祥弁護士は「機構の対応は国税微収法に違反している」と指摘する。地方税の微収にも適用される同法は、月収10万円以下の場合に給料の差し押さえを禁じている。「滞納者の生活を破綻させないためだが、機構は給与が口座に振り込まれたら『財産』になるとみなし差し押さえた『給与』ではないと言いたいのかもしれないが、脱法的なやり方だ」
さらに同法では、財産であっても「生活に必要な3カ月間の食料及び燃料」の差し押さえは禁じられている。「要は三か月分の食費や水道高熱費など当座の生活費を差し押さえできないという規定。その意味でにも、今回の差し押さえは違法以外の何物でもない」
機構の微収率は初年度の21%から東日本大震災を挟んでほど一貫して伸び続け、16年度は55%達している。全国平均20~30%を大きく上回る成果の陰で、その手法を問題視する声も絶えない。12年には県議会の野党系会派が「機構が滞納者に一括納付を求め、相談に応じようとしない」と要望書を出した。佐藤氏は「数字を上げることばかりを考え、過酷な取り立てが増えていくのではないか」と懸念する。
実際、全国で税滞納の微収強化に伴い、財産の差し押さえも増加。微収強化の「先進自治体」と目される前橋市では、国保税と一般税を合わせた差し押さえは06年度の3千510件から、14年度は1万768件と3倍になった。
「この中には、疑問のある差し押さえも数多く含まれる」と、反貧困ネットワークぐんまの仲道宗司法書士は指摘する。仲道氏が受けた相談では、市税や国保税を滞納した70代の男性が、2カ月に一度振り込まれる約24万円の厚生年金を支給日にほぼ全額、差し押さえられていた。
鳥取県も08年6月、個人事業税と自動車税を滞納した男性から、法律で禁止された児童手当13万円を差し押さえた。このケースでは、13年の鳥取地裁、広島高裁松江支部とも県の差し押さえを「違法」と断じている。地方税の微収現場で何が起こっているのか。
元税務署員で税理士の戸田伸夫氏はまず職員の認識不足を危ぶむ。「納税者の実情も考えず、いきなり強権的な手段を使うことは法の趣旨に反する。国税の担当官は毎年のようにある研修で法の理念を再確認しているが、自治体の職員は勉強が足りないようだ。もっと研修を積むべきだ」
一方、税理士の角谷啓一氏は「小泉政権以降、国と地方の税財政を見直す三位一体改革により地方交付税が削減されてきたことが、過剰な差し押さえの背景にある」と指摘する。財源付則に苦しむ自治体が微税強化を進める中で、財産を隠すような悪質なケースだけではなく、払えない人まで追い込む行きすぎた取り立てが続発しているとみる。「滞納者を悪だと単純に決めてかかっている。自治体職員は数年でほかの部署に異動するため、弱者を救うという法の理念が蓄積されないためだ」と危ぶむ。さらに16年度から、厚生労働所は国保税の収納率が上がれば、自治体への交付金を上積みする「保険者努力支援制度」を始めた。
この制度は、微収に拍車をかけてますます自治体が、過剰な微収へと傾ていく恐れがある」と懸念を隠さない。こうした状況に、今年4月、角谷氏は全国の税理士や弁護士らとともに「滞納処分対策全国会議」を結成。被害救済の動きも始まっている。
税の専門家らが繰り返すのは、過剰な取り立ては、自治体のためにもならないという点だ。出前の戸田氏は「人があっての自治体。滞納した人を守って育て、再び所得を生み出すようにして税金を納めてもらうのが本来あるべき姿だ。過剰な差し押さえで追い詰めてつぶしてしまえば、自分の自治体が悪くなるだけ。考え方を改めなければならない」


デスクメモ 「パナマ文書」が暴いたのは、タックスヘブン(租税回避地)を利用して税を逃れるお金持ちの実態だ。国が目こぼししたリストでもある。一方、パート女性には容赦ない。「格差是正」を後回しにする国の、ブラックジョークにような現実だ。守るべきものを履き違えるな。2017、10、30(洋)

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