11月18日 窓

朝日新聞2017年11月12日38面:突然転校してきたのは 「急な話だけど、明日、転校生が来るよ」「誰?」「先生もわからないんだ」 卒業まで5ヵ月と迫った10月16日。福島県川内村の中学3年生、秋元千果さん(15)は帰り際、担任の矢内香奈子先生(30)から聞かされた。この5年半、ずっと1人のクラスだった。原発事故の避難のあと、村で再開された学校に、18人いた同級生は戻らなった。
うれしい知らせなのに、千果さんは本当なんだろうかと疑った。小学6年に進級した時も、中学へ入学した時も、「同級生が戻ってくるらしい」と村中で話題になった。「良かったね」と声をかけられためど、何も変わらなかった。一つ下の学年は10人まで戻った。うらやましかったが、もう期待はしない。自分に言い聞かせてきた。
でも、翌朝。1年生の女子の知らせに胸が高鳴った。「『ナツキさん』という名前だって。バスの運転手さんが言ってた」家族で東京に引っ越した幼なじみがいる。名前は遠藤夏月さん(15)。中学を卒業したら福島に戻り、2人で同じ高校に行こうと約束しあっている。
その夏月さんに前夜、LINEで伝えた。「転校生が来るらしい」。戻ってきたのは、「がんばって」のひと言だけだった。「背は低かった? ツインテールだった?」。1年生に矢継ぎ早に尋ね、職員室に走った。でも、「転校生」の姿は見えない。臨時の全校集会が開かれた。校長先生と入ってきたのは、髪の毛を二つに結んだ夏月さん。
ヤベ、本当に来たー。教室に歩きながら、本気で怒った。「あのLINEは何?」「ごめんね」夏月さんは「一日も早く学校生活を一緒に送りたい」と両親を説得した。「一生の思い出になるように驚かせたい」と、先生たちに「サプライズ作戦」を持ちかけたのだそうだ。
運転手さんがしゃべってしまい、中途半端に終わったけれど。授業中、夏月さんはよく手を挙げる。1人だけじゃない授業って、こうなんだ。負けたくない、と自分もあとに続いた。(岡本進)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る