11月16日 オトナになった女子たちへ 益田ミリ

朝日新聞2017年11月10日33面:旅心誘われ30年前へ 「成人式の着物はいらないから」親に願い出て、学校主催のヨーロッパ研修旅行に参加させてもらったのは18歳のとき。今からちょうど30年前である。人生初の海外旅行でもあった。当時の「旅のしおり」を引っ張りだして開いてみた。イタリア・フランス・イギリス17日間。美術館や遺跡巡りなど、観光名所がほどよく組み込まれてあった。
「旅のしおり」には、さまざまなアドバイスも載っていた。「ヨーロッパはレディーファーストの国です。とまどわないようにしてください」。これを詠んだ18歳のわたしは、ちょっとドキドキしたのかもしれない。食事ついては、「スープはDRINK(飲む)するのではなく、EAT(食べる)する」など、部分的に英語になっているところも含めて、旅への期待感がふくらんだのかもしれない。
行ったはずなのに記憶にはない場所も、多々あった。「アペニン山脈を越えボローニャからパルマ、ミラノ」。行程表に書いてある。アペニン山脈に関しては、バス移動中に熟睡して見ていない可能性はあるが、ミラノ観光まで忘れているのはなぜか。わたし、行ったの?ミラノに? 覚えていることも、むろんある。街の屋台のリンゴが、日本のよりうんと小ぶりでかわいらしく見えたこととか。
自由時間、友達と焼き栗を食べながら歩いた道には冬の風が吹いていた。短大生の期間は短い。来年の今頃は就職が決まっているのかな、と思っていながら歩いたこととか。旅は、忘れずにいる記憶だけで十分のようにも思う。
久しぶりに「旅のしおり」を手にしたきっかけは、朝日新聞を読んだ「ひととき」のコーナーだった。執筆者である富田恵子さんは79歳。ご自身の年齢を考慮し、パスポートの更新を5年か10年かで迷われ、1年でも使えばいいと10年になさった。そんなお話だった。
「行楽シーズンになり、舞外旅行案内の雑誌をめくって、思いをはせている」そんな富田さんんぽエッセーに、旅に出たいなぁ! と朝から活気づいたのだった。 (イラストレーター)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る