11月15日てんでんこ 皇室と震災Ⅲ【4】

朝日新聞2017年11月10日3面:皇后さまが手にしたバッグは、被災した町工場が手がけたものだった。 天皇、皇后両陛下が伊豆大島を訪れた2014年2月28日。皇后さまが手にしていたバッグに注目が集まった。シルバーの小ぶりのボストンバッグ。宮城県南三陸町の町工場「アストロ・テック」が作製したものだ。
「明日を取ろう、技術で」。佐藤秋夫さん(67)がそんな思いで創業したのは03年7月だ。もとは時計メーカーで働いていたが、数多くの部下をリストラする立場になり、「自分だけ残るわけにはいかない」と退社。部下数人と電子部品製造会社を立ち上げた。順調に成長していた11年3月。東日本大震災の津波で工場が被災し、自宅も流された。だがリストラはせず、約1カ月後に登米市の空き工場を借りて操業を再開、翌12年10月には南三陸町に工場を再建した。そこで新たに作り始めたのがあのバッグだった。「どのように手入れされていたかは分かりませんが、社員とともにありがたく受け止めました」
14年7月、両陛下が南三陸町を訪れた時も、皇后さまはこのバッグを持参した。「色合いが素晴らしい」「視察の時に持って行くのに便利なんです」と周囲に語ったという。この訪問時、両陛下の車がアストロ・テックの前を通過した。佐藤社長は感謝を込め、社員や周辺住民ら約100人で出迎えた。
現在、このバッグは生産を中止している。だが、同社に飾られた同種のバッグを一目見たいと足を運ぶ人が相次いでいるという。両陛下が被災地訪問で手にする透明のビニール傘にも、お二人の思いが反映されている。もともとは黑色の傘を使っていたが、雨の中で待ち受けた人たちに自分たちの姿がよく見えるように、ビニール傘にした。
10年5月の神奈川県での全国植樹祭がきっかけだ。半世紀以上前からビニール傘製造を手かける「ホワイトローズ」(東京都台東区)の傘を両陛下が使ったことが縁で、宮内庁側から作製の依頼が舞い込んだ。透明度が高く、壊れにくいものを。要望を受け、4種類ほどの中から採用された。同年秋の園遊会から早速、皇后さまが手にした。13年7月、両陛下が岩手県大船渡市の工場を視察したとき、側近が黒い傘を差し出した。両陛下はそれを受け取らず、何かを指示した。まもなく、ビニール傘が用意された。須藤宰社長(62)のもとには今年も、宮内庁側から注文が入ったという。(島康彦)

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