11月11日 有権者の不信 壁

朝日新聞2017年11月6日4面:地方議員なり手不足 財政難 報酬増に反発 地方議会が悩む、町村議員の「なり手不足」。背景には、根強い有権者の「不信」の壁がある。払拭するにはどうすればいいのかー。ある町議選からヒントを探った。
10月22日、衆院選と同じ日に投開票された長野県飯綱町議選(定数15)。新顔6人を含む16人が立候補し、新顔5人が当選した。議員のなり手の発掘に一役買っているのが、町議会が2010年に始めた「政策サポーター」制度だ。町民の中から公募や推薦で選ばれたサポーターが議員と議論しながら、政策を提言する仕組み。これまで30~70代の延べ43人が参加し、「高齢者の暮らし」「人口減対策」など六つのテーマで提言を行った。
今回の町議選で初当選した滝野良枝さん(42)も13年にサポーターに就任。当時は乳幼児2人を育てながらマナー講師として働いていた。提言したことなどをきっかけに、町では延長保育料の一部無料化が実現。「行政が自分の声を反映してくれた」。手応えを感じ、次のステップとして議員にチャレンジした。
今回引退した寺島渉議長(68)は「子育て中の若い母親の代表。60、70代が中心だった議会の幅が広がる。若い人の議会への関心も高まる」と期待する。こうした取り組みで、飯綱町議会は議会改革の先進地として注目される。だが、10年前には住民から批判を浴びて厳しい局面に立たされた時期があった。赤字経営が続いていた第三セクターのスキー場が06年に破綻し、損失補償契約を結んでた町は約4億3600万円(後に8億円に増額)を払わなければならなくなった。住民説明会で、こうした事態を、見過ごした町議会にも批判の矛先が向けられた。当時の町民アンケートでは、議会の現状に「満足していない」が76%に上った。
 研修重ね改革 08年、議会改革 08年、議会改革に着手。議員同士で地域の課題について話し、研修を重ねた。議会だよりのアンケートを議員が町民に直接配布し、町民との接点をつくった。やがて、議会の一般質問が活性化した。町側に「職員の答弁能力が低い」と抗議文を突きつけたり、補正予算案を「切迫性がない」と否決したりして、次第に存在感が高まってきた。
セクハラややじや号泣、政務活動費の不正ー。地方議員に対する不信は高まるばかりだ。それに財政難も加わって、身動きがとれない議会も少なくない。人口約2万人の佐賀県多久市では、市議会が「なり手不足対策」としてまとめた議員報酬の増額案に市民が反発する事態に陥った。定数16を1減らす一方、議員報酬を月額1万5千円増やし、政務活動費を新たに設けるという内容。だが今年5月に市内の公民館で開かれた説明会で、疑問の声が相次いだ。「削減と引き換えに報酬をあげるよ、と受け止める人が多い」市議会は15年4月の市議選が無投票になったのをきっかけに特別委員会を設置し、昨年12月に対策案をまとめた。議員報酬が少ないと、仕事と議員活動を兼業しづらく、議員になる間口を狭めてしまうためだ。
「活動見えぬ」 だが、地区代表でつくる市区長会正副会長会が「絶対に認められない」とする意見書を提出。理由は、一般質問の内容や議員活動に対する不信感だった。野田義雄・区長会長は(70)はこう言う。「普段の活動が見えないのに、報酬の増額や政務活動費を要求するのは理解できない」
愛知県東部の東栄町議会は9月、人口減で定数を現在の10から8に減らすことに決めた。議員報酬は月額18万円だが、なり手不足対策のために報酬を増やすことは難しい状況だという。理由は財政難だ。町の予算30億円のうち、独自の税収入は3億円だけだからだ。
議員のなり手に立ちはだかる「兼業」の壁と、「不信」の壁。だが、飯綱町議会は着実に対策を進める。今年3月に議員報酬を月額1万4千円上げる条例が、9月28日の臨時議会では政務活動費を月額1万円支給する条例がそれぞれ成立した。「なり手不足は二元代表制の一翼を弱体化する」。住民説明会で寺島議長(当時)が説明すると、賛成する意見が相次いだ。
対策を牽引してきた寺島氏は言う。「制度や条例をつくればなり手不足が解消するわけではない。それでも、住民を巻き込む努力をあきらめずコツコツやれば、どこかで実を結びます」(関口佳代子、岡村夏樹、北上田剛)

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